第二話 「青い光」 第10節の4
俺は、ぼんやりと立っていると、「今のは、オモロかったなあ」と突然、背後から声を掛けられた。
鍛冶舎が、セミアコのギターを持って立っている。ペグの所の、ネックと弦の間にハイライトを挟んで。
「ああ・・・・。そう言えば、次だね。頑張って」
鍛冶舎は、聞こえなかったかのように、返事もせずにステージに向かった。
ベースと、ドラムが、二人とも女の子だった。
「このオヤジ、またリズム隊は借りモンかよ」
いつの間にか、YAEが隣に立って、腕組みをして言った。
「彼女らは、別にバンドやっているのか。・・・・君は、鍛冶舎を知っているの?」
「何回か、別のライブハウスで対バンした。あのオッサン、うちのドラムにも声かけやがって」
「鍛冶舎は昔から、気に入った奴には全員声をかけるんだ」
「神ノ内さん、だったっけ。あんた、知り合いみたいだけど、一緒に演ったことあるの?」
「いや」俺は訊かれたくないことを訊かれた。「無い」
「あのオヤジが声掛けるのは、女の子が多いからな」
YAEはそれ以上言わなかった。
ドラムの子が良かった。音は小さいがパラディドルが正確で、無駄が無い。きっと、俺と一緒で吹奏楽出身だろう。
そして、こんなにタメがあって腰に来るグルーブには、なかなかお目にかかれない。
・・・・この“タメ”という厄介なシロモノは、練習して会得できるものじゃない。認めたくないが、才能としか言えない部分がある。俺はこういうタメのあるグルーブが大好きなのだが、自分は出来ないのだ。
そして、鍛冶舎の演奏は・・・・、相変わらずだった。奇抜なイントロ、憶えやすいリフ、所々で鋭く切れ込むギター、キャッチーなサビ。そして、相変わらずその長く細い指は良く動く。
歌も、相変わらず「君が」「僕が」の歌で、そして哲学的だ。ただ、奴の歌詞の中で、間違うのは何時も「君」で・・・、そして「僕」は何時も独りだった。
鍛冶舎の演奏の途中で、輝広とあゆみが降りてきた。
「どうしよう。冬美ちゃんが来ない」と、耳打ちしたあゆみの声は、少しパニクっていた。
鍛冶舎が、セミアコのギターを持って立っている。ペグの所の、ネックと弦の間にハイライトを挟んで。
「ああ・・・・。そう言えば、次だね。頑張って」
鍛冶舎は、聞こえなかったかのように、返事もせずにステージに向かった。
ベースと、ドラムが、二人とも女の子だった。
「このオヤジ、またリズム隊は借りモンかよ」
いつの間にか、YAEが隣に立って、腕組みをして言った。
「彼女らは、別にバンドやっているのか。・・・・君は、鍛冶舎を知っているの?」
「何回か、別のライブハウスで対バンした。あのオッサン、うちのドラムにも声かけやがって」
「鍛冶舎は昔から、気に入った奴には全員声をかけるんだ」
「神ノ内さん、だったっけ。あんた、知り合いみたいだけど、一緒に演ったことあるの?」
「いや」俺は訊かれたくないことを訊かれた。「無い」
「あのオヤジが声掛けるのは、女の子が多いからな」
YAEはそれ以上言わなかった。
ドラムの子が良かった。音は小さいがパラディドルが正確で、無駄が無い。きっと、俺と一緒で吹奏楽出身だろう。
そして、こんなにタメがあって腰に来るグルーブには、なかなかお目にかかれない。
・・・・この“タメ”という厄介なシロモノは、練習して会得できるものじゃない。認めたくないが、才能としか言えない部分がある。俺はこういうタメのあるグルーブが大好きなのだが、自分は出来ないのだ。
そして、鍛冶舎の演奏は・・・・、相変わらずだった。奇抜なイントロ、憶えやすいリフ、所々で鋭く切れ込むギター、キャッチーなサビ。そして、相変わらずその長く細い指は良く動く。
歌も、相変わらず「君が」「僕が」の歌で、そして哲学的だ。ただ、奴の歌詞の中で、間違うのは何時も「君」で・・・、そして「僕」は何時も独りだった。
鍛冶舎の演奏の途中で、輝広とあゆみが降りてきた。
「どうしよう。冬美ちゃんが来ない」と、耳打ちしたあゆみの声は、少しパニクっていた。
by jazzamurai_sakyo
| 2009-04-08 00:22
| 第二話 「青い光」