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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第二節の1

     二

 俺の最近の悩みは、金と時間が無いことだった。図書館司書の仕事は給料が良い訳ではないのに、新たな出費に軽く悩まさせていた。
 “underground garden”ラストライブ・イベントの後、「癩王のテラス」は週に二日(月、木)、一回三時間程度練習をした。各人が持ち寄った新曲を仕込むことにしたのだが、これに時間を盗られていた。
 そのうち、あゆみが持ってきた歌物の曲は、メランコリックなメロディで、最初は「青い光」の様に弄っていたのだが、結局、原曲の雰囲気を残した小曲としてアレンジにした(もちろん、捻るべき所は捻ったが)。ただ、薫子が歌詞を書くのをやんわり拒否し、あゆみも歌詞を一向に持ってこず、加えてあゆみも薫子も歌うのを譲り合ったため、詰めが難航していた。
 デモテープに入れられたあゆみの声は、低く、ぶっきらぼうだったが、聴きようによってはSandy Dennyの様に聴こえなくもなく、意外に気に入った俺は、あゆみが歌うことを主張したが、・・・・なかなかウンと言わない。
 輝広が持ってきた、ブルースフィーリングの強い曲は何とかものになりそうだったが、これもインストのままにするのか、歌詞をつけるのか、輝広の意思がハッキリせず、ストップしていた。
 しかし、あゆみと輝広が持ってきた曲は、明らかに歌ものにすべき曲だった。正直、二人に歌ものが作れるとは思っていなかったが、薫子にやれといったこと、つまり、歌詞を書けと言ったことを、あゆみと輝広には言わずに済む訳でもない。
 ひょっとすると、あの曲=「青い光」に対して、あゆみと輝広の意識に、何か囚われの心が出来てしまったのかもしれない。
 その「青い光」には、薫子の当面の凍結宣言があった。
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by jazzamurai_sakyo | 2009-11-04 00:03 | 第三話 「紫の指先」