第三話 「紫の指先」 第五節の4
「Televisionは好きです。やりたいとは思わないけれど。
“White Heat”の中で、一番目立たないけど、サウンドの一番下で、リズムと音程を堅持していたのが、彼女だった。
その頃から、彼女がお目当ての客も多かったな。
・・・・何故、おじさん達は、かき鳴らすのが、パンクだと思っているのかしら。チューニングも無茶苦茶。彼らが好き勝手やっている中で、辛うじて音の核が保てているのは、彼女がそこにいたからだった。堅い、正確な音だった。無表情な顔して、細い指でね」
「今のタメタメと違うじゃないか」堅い音なら、俺には合うはずなんだが。
「・・・・そうね、彼女の音は大分変わったと思う。でも、私は、私の音に合うか合わないか関係なく、今のあゆみちゃんの音が好きだし、初めて聴いた時から、あゆみちゃんの本当の音は今みたいな音だと思っていた」
「それで、何で、どうやって引き抜いたわけ」
「打ち上げで喋ったら、もっと魅力的だったから。お酒が入ると明るくなって、甘え症になっちゃうのは、その時から全然変わって無い。そして、色々と、喋ってくれて」
「どんなことを?」
「それも、あゆみちゃんに直接訊いたら良い。たぶん、飲ませたら、すぐ喋るだろうから・・・・」
「飲んでも、あゆみは、あまり自分の話はしたことなかったんだけどなあ」
「それは、まだ飲み足りないからよ。
それから、彼女を観るために、次の“White Heat”のライブに行って、相変わらず酷い演奏で・・・・。それで、私、気になって、あゆみちゃんにくっついて、また打ち上げに行って、その・・・・、ヴォイドさんと喧嘩になっちゃって」
薫子は、苦笑した。苦笑する薫子を見たのは初めてだ。
「なんで」
「キメでリズムがずれて、八部音符、ひっくり返ったのは、あゆみちゃんのせいだって。お前、何時になったら俺達に付いて来れるんだって言って。ヴォイドさんが早く突っ込んだせいだったのに、あゆみちゃん、目を伏せたまま、ごめんなさい、って言うもんだから。
私、あゆみちゃんと一緒に、結構飲んでいたので、ついつい、『何言ってるの、狂ってるのは、おじさん達の耳でしょう』って、それから『聴かせたいなら、もう少し練習したらどうです。下手なんですから』って、言っちゃって・・・・」
あれ、耳朶が赤くなってる?「それで」
“White Heat”の中で、一番目立たないけど、サウンドの一番下で、リズムと音程を堅持していたのが、彼女だった。
その頃から、彼女がお目当ての客も多かったな。
・・・・何故、おじさん達は、かき鳴らすのが、パンクだと思っているのかしら。チューニングも無茶苦茶。彼らが好き勝手やっている中で、辛うじて音の核が保てているのは、彼女がそこにいたからだった。堅い、正確な音だった。無表情な顔して、細い指でね」
「今のタメタメと違うじゃないか」堅い音なら、俺には合うはずなんだが。
「・・・・そうね、彼女の音は大分変わったと思う。でも、私は、私の音に合うか合わないか関係なく、今のあゆみちゃんの音が好きだし、初めて聴いた時から、あゆみちゃんの本当の音は今みたいな音だと思っていた」
「それで、何で、どうやって引き抜いたわけ」
「打ち上げで喋ったら、もっと魅力的だったから。お酒が入ると明るくなって、甘え症になっちゃうのは、その時から全然変わって無い。そして、色々と、喋ってくれて」
「どんなことを?」
「それも、あゆみちゃんに直接訊いたら良い。たぶん、飲ませたら、すぐ喋るだろうから・・・・」
「飲んでも、あゆみは、あまり自分の話はしたことなかったんだけどなあ」
「それは、まだ飲み足りないからよ。
それから、彼女を観るために、次の“White Heat”のライブに行って、相変わらず酷い演奏で・・・・。それで、私、気になって、あゆみちゃんにくっついて、また打ち上げに行って、その・・・・、ヴォイドさんと喧嘩になっちゃって」
薫子は、苦笑した。苦笑する薫子を見たのは初めてだ。
「なんで」
「キメでリズムがずれて、八部音符、ひっくり返ったのは、あゆみちゃんのせいだって。お前、何時になったら俺達に付いて来れるんだって言って。ヴォイドさんが早く突っ込んだせいだったのに、あゆみちゃん、目を伏せたまま、ごめんなさい、って言うもんだから。
私、あゆみちゃんと一緒に、結構飲んでいたので、ついつい、『何言ってるの、狂ってるのは、おじさん達の耳でしょう』って、それから『聴かせたいなら、もう少し練習したらどうです。下手なんですから』って、言っちゃって・・・・」
あれ、耳朶が赤くなってる?「それで」
by jazzamurai_sakyo
| 2010-01-13 22:55
| 第三話 「紫の指先」