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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第八節の1

     八

 「Light My Fire事件でしょ? 忘れられないなあ」
 「何、それ」
 俺とあゆみは、何時もの紫野山さんの店ではなく、少しバスに乗り、寺町御池上ルの古いビル三階にある、「Bar紫煙」に行った。バーボンが飲みたいと、あゆみが言ったからだ。
 かなり昔にボトルを入れた記憶があった。俺より少し年上の姉さんが一人でやっている店で、入り口に置かれた骸骨は本物だとの噂があった。客は俺達だけだった。
 「神ノ内さん、えらく美人の彼女ね」と、自分も美人の姉さんは言い、俺のボトルを出した。つまみの注文を訊いた後は、座敷で俺達が飲むに任せていた。小さな音で、偶然にもThe Doorsが流れている。
 「あ、聞いてない?カオルンったらねえ、膝を抱えてのたうち回ってるヴォイドを見ながら、私が飲んでいたウォッカのストレート、頭にぶっかけてね。『ねえ、誰かライター貸して』って言って、薄くなった髪の毛に、火、付けてね。
 叫いてるヴォイドに、『うるさい。 “Light My Fire”でしょ。本望でしょ』って、言ったのよ」
 「わはは・・・・」怖えー。
 「一瞬、燃えただけなんだけどね。
 ・・・・私、年上の男に、弱くって、反抗したことが無かったんだけれど、あれで少し人間が変わったかな」
 「年上の男って、俺もそうだけど」
 「カミさんはカオルンが連れてきた人だから、初対面の時から気を遣ったことは無いなあ。
 ……私、父親が天敵なの。あいつの前に出ると全然ダメなの。なんにもできないの。ただ、はい、はい、って言うばかりで。だから、家を出た時は本当に気楽になったんだけれど、でもダメなの。ベース片手にバンドをやり始めてからも、偉そうなことを言う、年上の男ばかりに捕まっちゃって。何時も、そうだったの」
 「天下のフェロモン散布マシーン、あゆみ姉さんがねえ。
 でも、薫子が喧嘩してまで、君を引き抜くなんて」
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by jazzamurai_sakyo | 2010-03-24 08:15 | 第三話 「紫の指先」