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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第八節の2

 「ベーシストを引き抜くと言うより、友達として助けてくれたんだと思う。私こんなんで頼りないでしょ。それであの頃、ヴォイドに覚醒剤やらされてたんだ。それを知ってカオルンは私に会う度、『止めなさい』って、ずっと言ってた。
 カミさんと同じで私もハッパは大好きだけど、覚醒剤は嫌だった。あれをやる人は、セックスすると気持ち良いらしいんだけれど、私は逆で気持ち悪くなるし、それに父親の事ばかり思い出して頭から離れなくなるの。
 それから、ヴォイドの口が何か少し臭う気がするの。普段は気にならないんだけれど、覚醒剤をやってキスしている時、ああ臭い、って、そればかり気になって、優しくしてあげたい気持ちが、努力しないと出て来なくなるの」
 「あれは良いことなんか一つも無い。俺はやったこと無いけど、やってる奴はみんな音が悪くなっていった。なんか、細かい事ばかり気になって仕方なくなるらしいんだ。切迫感に苛まれて、いらいらするらしい。酒も不味くなるらしいし。
 第一、俺は酒以外に不健康なことするつもりは無いんだ。最近はハッパも必要なくなった」
 「すぐ抜けられて本当に良かったわ。お酒が不味くなるのは嫌だ。その点は一緒ね、私達。
 演奏してても、ズレてばっかりなのに。はは」
 あゆみは、そういって、グラス半分になっていたソーダ割りを一気に飲んだ。そして、少し、唇を拭った。
 あゆみも、やはりそう思っていたのか。
 「前のバンドでヴォイドに支配されていた頃の私となら、カミさんと合ったかもね」
 あゆみは、Four Roses黒に手を伸ばす。そして、自分のグラスと、俺のグラスを作る。
 「ありがとう。・・・・そうかもしれない。その頃のあゆみとなら、ソリッドな音にまとまっただろうな。でも、つまらなかったと思う」
 「気休めはいい」
 あゆみはそう言ったが、少し拗ねた口調だった。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-03-31 01:20 | 第三話 「紫の指先」