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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第八節の5

 「え。それもかなり馬鹿ね」
 「所詮、文化系だからな。部活もブラバンだったし」
 「ブラバンは体育会系でしょ」
 「文化系だろ」
 「まあいいわ。私は本当に馬鹿な女よ」
 「まだ言うか」
 「だって、本当にそうなんだもん。何処が馬鹿かって、とにかく男の趣味が悪い。既にお察しの通り、ファザコンなんだ」
 「そうみたいだな」
 「というか、年上で、私より賢くて、ちょっぴり優しい所を見せてくれる人なら、結構、もう誰でも良いというか。そんな感じなんだ」
 「ふーん・・・・」俺は少し携帯の男のことが気になった。
 「やっばり、私はバカな女よ。そうじゃなきゃ、あんな男と付き合わない。自分の都合の良い時にしか遊んでくれない、我が儘な妻子持ちなんかと」
 「ふーん・・・・」俺は何を言ったら良いか、戸惑った。
 でも、少し気になって、もう少しだけ突っ込んで、言うことにした。説教じゃ、ないつもりだけど。
 「あゆみ、その、年上の男、もう止めとけよ」
 「え」
 「お前、絶対、無理して、甘やかしてやるんだろう? そんなのは、もう止めとけ。今は、バンドだけで良いじゃないか?」
 「そうね・・・・。いらないわ。もうしんどいもん・・・・」
 そう言って、あゆみは少し泣いた。
 俺はちょっとだけ、左肩を貸しながら、グラスを傾けた。
 Four Roses黒は、十二時半頃に無くなり、それから俺達は少し考え、結局、もう一本入れた。それから、俺達は、朝まで飲んだ。くだらない話から、新曲のアレンジの事まで。
 朝まで飲んで分かった事は、お互いが持っている音源が、数枚を除いて、全く重なっていないという事だった。
 そのうちの一枚に、Carole Kingの「Tapestry」があった・・・・。
 五時半頃、店を出た時、俺は結構酔っていた。が、あゆみは足取りもマトモで、ただ、上機嫌だった。
 「あゆみは酒、強いな」
 「カオルン程じゃ無い。飲み代は、また、今度返すね」
 「ああ、気にしなくて良い。どうせ、LPかCD買うか、酒飲むしか、金の使い道も無い」
 「あはは。気が大きくなってるよ、この人。おじさんだ、オジサン。似合わないから止めて」
 「おじさんさ。だって三十歳超えてるんだぞ」
 ・・・・それからタクシーに乗ったはずだが、覚えていない。
 何もしなかったとは思うが、ちょっと心配だな。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-04-21 00:30 | 第三話 「紫の指先」