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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第十五節の2

 「なるほど、一バンド一曲ずつね。あれ、うちが二枚目トリで、・・・・この演奏時間。ひょっとして、まるまる入ってるの?」
 「その通り。十八分四十二秒。『青い光』が、イントロの冬美ちゃんの即興も含めて、全部入ってる」
 「信じられない。歌の部分だけだと思ってた」
 「私も。よっぽど気に入られたみたいだわ」
 「・・・・他のバンドに悪いな。全然、出演してなかったのに」
 「YAEが強力に押してくれたんだって」
 ・・・・あいつ、やってくれたな。「かけてもらおう」
 いい音だ、とは言えなかったが、メリハリのある録音だった。ラインの音だけじゃなくて、ちゃんと外の音もミックスしてあった。やっぱり、この四人は・・・・「凄いな」。
 「私も、凄いと思うわ。カミさんのドラム」
そうじゃなくて。あゆみの粘っこいグルーヴ感が改めて凄い。
 「・・・・こうやって聴くと、俺達、合ってないわけじゃないな」
 「私もそう思った」
 「ベースが良く歌ってる」
 「そう? ただただ必死よ」
 「神ノ内さん、何だか良く分からない曲だけど、この演奏良いじゃない。くれるなら、店で宣伝するけれど?」と「紫煙」の姉さんは言った。
 「千枚作って、実はもう、何故か在庫があまりないそうです」とあゆみは言った。

 翌日、俺は仕事を終えて、梅田の大阪ブルーノートへ。
 俺達は、その若い日本人ピアニストの指使いがよく見える席に並んで座り、赤ワインのボトルを飲んだ。彼は、巧かった。きっと、深浦翁より、指使いは器用だっただろう。
 でも・・・・。俺は死ぬ程、退屈だった。若いくせに、癖のない歌物のスタンダードばっかりやりやがって。
 「退屈ね」食い入るように聴いていたくせに、あゆみもそう言った。
 「・・・・結局、あの人はこういうちゃんとした所で、綺麗な音を聴く人なのよ」「そう」
 「私、草ちゃんの方が、断然好きだな」
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by jazzamurai_sakyo | 2011-08-03 00:40 | 第三話 「紫の指先」