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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第三話 「紫の指先」 第十六節の2

 カミさんは、場所だけ言って様子を見ている。
 「行き方を言わないの?酔っぱらいって、足下見られるから危ないんじゃない」
 「まあ、寝てしまって、全く見当の付かない所で下ろされたことはあるな。百万遍の知恩寺の前で引きずり下ろされて、膝を擦り剥いたこともあったし」と小声で言った。
 「でも、相手がどう出るか、見てるのも楽しいからな」
 「楽しい?」
 「全部自分で決めてしまうのは面白く無いだろ。そんなにぼられた事も無いし。遠回りされそうで、ヤバイ時は言うけれど。
 積極的には話しかけないが、運ちゃんと話をすることも楽しいな。時々、十円単位ならまけてくれる人もいるぞ」
 「ふーん。
 ・・・・ねえ、関係の無い話をして良い?」
 「・・・・いいよ」
 「私が今、付き合っている人は、全部自分で決めてしまう人なんだ。仕事もね、責任感が強いっていうか、他人に任せて破綻した時に顧客に迷惑をかけるのが嫌だって言って、企画や資料作成とか、主な仕事は抱え込んじゃって、部下には雑用しか頼まないの」
 「ふーん」
 「私、そういう責任感の強い人に弱いのよね」
 「そうか。でも、それって責任感かなあ。義務感じゃない?」
 「義務感?」
 「俺が以前、付き合っていた子は、会社勤めしながらバンドでキーボードをしていたんだけれど、その子がよく言ってた。
 あゆみの彼氏は、机の上、整頓されてる?」
 「資料いっぱいで、あまりされてない」
 「本当に仕事ができる人は、机の上がキレイに整頓されているんだって。仕事の根幹は部下にやらせて、ポイントだけ頭に入れて、それをチェックするだけで、後は部下に任せちゃう。だから些末な資料は手元に置かない。その代わり、失敗したら、部下の責任、全部引っ被るんだって。そういう人が、本当に仕事ができて、責任感のある人なんだって」
 「そう・・・・」
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by jazzamurai_sakyo | 2011-11-02 08:00 | 第三話 「紫の指先」