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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

jazzamuray.exblog.jp

1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

カテゴリ:第三話 「紫の指先」( 64 )

 俺は、苦手なドラムソロを敢行する。短いようで長い四小節。
 そして、薫子のソロ。圧倒的な。
 本当はピアノソロの後に来るはずのフォーバース(四小節交換)。つまりの、薫子と俺との、「入れたり出したり」。
 俺には、ドラムソロを長く続ける程の、気の利いた芸はない。
 だが、薫子は容赦してくれない。
 俺が客なら、おまえのファンなら、きっと真正面でおまえの生音を浴びる今この瞬間を、恐ろしい快楽と思うだろう。
 今の俺には、それを感じる余裕はない。
 ただ、お前に甘えず、お前に引きずられず、お前を拒否せず、お前の美しさと、俺の全ての、両方を輝かせるために、俺がやれることは何か。ただ、それだけを考えてスティックを振り、ペダルを踏む。
 薫子は、ドラムソロを、俺を冷徹に見ている。
 冷徹だが、軽蔑のない、例の温度で。
 俺は、お前のその視線が好きだ。一瞬たりとも、気の抜けない、緊張感が。
 お前が、俺を、いや、他人を、入り口から拒絶する人間で無いことが、分かっているから。
 お前は、あゆみを取り戻すために、ボイドと対決した。
 そのことを話す時に見た、頬の赤らみは、決して、ボイドを人間として無視した者に現れるものじゃなかった。
 無視は苛烈なノン。対決は相手を意識するノンだ。
 だから、お前はきっと何処かで、ボイドともう一度、「出会う」つもりだろう?
 だが、音楽の場でお前と出会う人間は、お前と対等に話せる技術と力がなければ、ただひれ伏すか、無視するかしかない。ひれ伏せば薫子は興味を失い、無視すれば蹂躙しようとするだろう。
 ・・・・四回のフォーバースが終わる。今日の俺は、防戦一方だが、俺は絶対にお前に支配されはしない。例え傷付こうが、俺はお前と切り結ぶのが楽しいからだ。きっと、他の三人もそうだろう。
 終わりのテーマに戻る時だ。薫子はフレーズをまとめた。
 俺へのまなざしは何か言いたげだ。だが、今は翁へ振り向いた。翁も俺たちを見ていた。
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by jazzamurai_sakyo | 2011-02-02 10:00 | 第三話 「紫の指先」
 冷たく高速の即興のまま、二コーラス目に入る。薫子は息切れ一つしない。翁は相変わらず、可愛くフォローする・・・・。
 が、突然、俺の方を振り向いて、左目でウインクする。
 そして、トンと不協和音を響かせる。
 俺は、乗じて喧しくタムを打ち鳴らす。
 あいつを混乱させる気は無いが、ジャズ・ドラマーはバックミュージシャンじゃない。ジャズは食い合いだ。
 食われたままで終われるか!
 薫子が振り返る。口元が笑っている。あいつはやる気だ。ピンマイクはアルトの口に付いている。
 だから、吹く向きはお構いなしだ。
 目が俺を捕らえる。鼻腔が小さく広がり、大きく吸い込むのが分かる。
 最前列の、冬美の冷たい顔も見える。薫子を凝視する眼差しが、俺も突き刺している。
 輝広とあゆみも俺たちを見ている。
 薫子の頬が少し膨らんだり縮んだりする。
 凄い音量で、こんな速いフレーズを吹いているのに、顔色は変わらない。とても、慎ましやかに仕事している。
 俺は今、あいつの考えていることの十六分の一音符単位、出来ればその半分の範囲の遅れで、共感し、出来れば、先手を打ちたいと思う。
 だが、四分の一小節は感覚が遅れている。
 フォローして、プッシュしてやるだけじゃダメだ。
 俺に着いて来いよ!/と誘ってもあいつは振り向かない。
 そのフレーズは中途半端だよ!/どっからそのフレーズ持ってきた!くそ、最高じゃないか!
 これで行け!/だが、あいつはそれを踏み台にする!
 俺達の距離は少しずつ縮まる。/追いつくことができない。
 ああ、あいつは何なんだ。凄い。
 俺はプッシュしてやることしか出来ないのか・・・・。
 と思った時だった。
 フレーズの最後、リードがコントロールを失って、高く呆けた音を出した。意を決したように、長くそれは放たれる。
 井能さんの太い音で俺は自分を取り戻す。
 翁が重いコードをぶち込む。
 おれは、精一杯鋭く、フィルインする・・・・。
 しまった!小節の終わりだ。次はピアノ・ソロだ。
 だが、俺は次の仕掛けに入っている。
 翁が振り返る。「そのまま、行っとけ!」と唇が動く。
 井能さんの右手がベースのネックを握って止まった。
 ・・・・薫子が俺の正面に来て、向けた人差し指を上に振った。「行け」という意味だ。
 ・・・・ここまで詰められちゃ、行くしかないね。
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by jazzamurai_sakyo | 2011-01-05 23:22 | 第三話 「紫の指先」
 テーマが終わり、薫子が飛ぶ。リードがカンカンカンカンとなる音が聴こえるかの如く、音は粒立ち、一つ一つが力を持つ。明るく、クリアーに、放たれる。
 “The Sorcerer”での演奏が、まるでウォームアップだったかのように、俺のど真ん中に投げ込む。
 俺は必死だ。勿論、スウィングなんて無理だ。ただ、フォービートを維持するだけだ・・・・。
 でも、ええい、失敗を恐れてはいられない!
 今日、一番、やれてないのは、俺だからだ。
 “ハプニングを上手く使って、違う世界に飛び込みませんか”と薫子は言った。そうするよ。幸いベースが堅実だ。井能さんを頼りに、恐れず突っ込んで行こう。
 トーン、と、ピアノの音がした。そして、コロコロとアルトにクロスする。
 薫子は、くすぐられる様に、それを可愛がる。翁は、あえて速さを捨てて、薫子と遊ぶつもりかな。
 俺は、それを隙と捉えて、リムショットの連打を打ち込む。
 だが、薫子は、低くブローして俺をあしらう。
 そして高低のフィールドを自由に交換して、思いっきり前へ蹴り飛ばす。
 くそ。無視されているのではないことは分かっているが、その乱されない姿勢を、俺は少し腹立たしく感じていた。
 俺がこんなに必死でやっているのに、こいつは何故、何時も独りで、甘えを排して、媚びることなく、立っているのだろう。
 俺は、薫子を追いかける。そして、ノースリーブの背中を見つめる。痩せている、と思ったけれど、華奢ではない肩だ。
 そのきれいな肩の筋肉が、感性を飛翔させるために、熱を帯びているのが分かる。あいつは複雑なフレーズを吹き切るのに、身体をくねらせたりはしない。凛とした背中は、目的のために最少の力で、最高の音を出すためにだけ、鍛えられているのだろう。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-12-01 23:52 | 第三話 「紫の指先」
     十三

 薫子はドラムの前までタオルを取りに来ると、少し屈んで首筋を拭いた。そしてフロアタム側から俺の耳元に囁いた。
 「タタタタって、これくらい速く始めて・・・・」
 ・・・・今まで全く意識したことのない香りが、ふっとした。若い汗の香りだ。俺はちょっとくらくらした。
 「良いですか」
 「ああ、良いよ」と、朦朧と答えてしまった。
 「・・・・今日の神ノ内さん、らしくないですよ」
 「・・・・緊張かな」俺は、目を逸らして言った。
 「やっぱり、らしくない」
 まあな。だが、仰せの通りに致しますよ。
 その香りを、お前の本気を嗅いだ限りは。
 俺は閉じたハットを素早く叩き出す。翁の「速いぞ!」という叫び声が聞こえた。だが、俺は意に介さず、軽くフィルインする。井能さんが苦笑しながら入ってくる。
 Charlie Parkerの「Confirmation」、薫子のリクエストだ。
 薫子は明るく快活にテーマを歌う。諦めた翁の左手が、やれやれといった感じで、コードを落とす。
 きっと薫子の中で、ここまでのシナリオは出来ていたのだろう。本物なのか、もう一度、試すつもりだな。
 俺は良いけどな、速いのは。客は相当びっくりした顔をしている。それは、恐らく薫子の技術の高さにだろう。
 ただ速いのは馬鹿でもできるが、往々にして演奏が痩せてしまう。音は出切らない、手癖に頼るから、バリエーションもない。
 テンポを維持するのに、意識が集中するからだ。
 テンポという手段が、目的になってしまう。
 ところが・・・・、薫子の切れは尋常じゃない。テーマ吹奏の中に、ちゃんとその後の即興の方向性が示されている。あいつは、真正面からParkerをリスペクトするつもりだ。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-11-17 07:00 | 第三話 「紫の指先」
 コイツは、突き付ける。常に、選択を。進むか、退くか。右か、左か。
 何時だってそうだ、らしくない瞬間も知っているけれど、コイツの本性はそのはずだ。
 刹那刹那、俺は決断し、対峙しなければならない。
 急上昇するフレーズ、Jackie McLeanのような。
 俺はスネアを連打し、クラッシュを突っ込ませる。
 果敢に六順目に向かう翁。粒の立った音で右手を滑らせる。
 何というフレーズ、逃げも隠れもしない、モードの限界を高速で描き切ろうする・・・・。無茶だ、出来っこないよ。
 そら、またつっかえた。
 だが、右手は全く動揺しない。
 左手にそれを発展させる高速フレーズを弾かせて、また、その上に乗って、すべらかに歌わう。
 それをまた受け取って発展させていく薫子の七順目。
 やられた・・・・。凄い同調。翁はコードでプッシュし、左手のフレーズは薫子の即興を拡大する。
 引き続いて、左手のフレーズから低くつなぐ。
 ゴンゴンゴンゴン!と太い音がゆったりと上昇する。
 段々と力を蓄えてラストに向かう、左手。
 ガツンとコードが落とされる。
 それに乗って飛ぶ薫子。ラストのソロ。
 飛び出す刹那に刺激的なコードを撃つ翁。
 薫子のソロは翁の八順目に乱入する。翁は気にせず、左右のつなぎを意識させず、上手く交差させて、爆発的フレーズで急上昇する。多少の濁りなど関係ない。
 飛んでやがる・・・・。
 クソ、楽しいじゃないか! 俺は目一杯プッシュしてやる。
 翁の背中が喜悦に満ちているのが分かる。
 カッコいいぜ、じじい。
 八順目が終わりに近づく。スカンスカンとスネアを鳴らせ、Elvin Jones風のタムの連打を入れた時、薫子は少し熱を帯びたまま、テーマに帰ってくる。
 翁は飛び続けている。凄いな。
 テーマは繰り返され、翁は降りてきた。ユニゾン。俺はスネアを連打し、翁は決めのコードを落とす。
 俺は、ハイハットを開放で鳴らして、アクセントをつける。
 井能さんは複数弦を鳴らす・・・・。
 客が大きく拍手した。そらそうだろうな。これを聴いて冷えてたら、ライヴにくる意味ないよ。
 薫子が、横を向いて少し笑った。
 翁も薫子を見て満足そうに笑った。
 ふん。やっぱり吹っ切れたな・・・・。これが翁の本当の姿だったんだな。
 そう思った瞬間、薫子は振り返り、俺を見て“そうよ”と言わんばかりの自慢気な顔をした。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-11-03 01:13 | 第三話 「紫の指先」
 俺はアプローチを変えて、プッシュしてやる。まるで示し合わせたかのようだな。
 いや、違う。恐らく、翁は薫子を認めたな。だから、導かれる所に行こうとしているのではないのか。だが、薫子の性格からして、それはなかなか困難なお付き合いだぞ・・・・。
 三順目、改めて曲に向き直ったように、音を選ぶ薫子。この曲の使える音は広い。噛み締めるように付き合う翁。
 やるな。俺はハイハットを開いて連打し、リズムを広げる。
 四順目、曲想を裏返したかのように、上下に動くフレーズを正確に吹く薫子。お前はひょっとしてMilesのモード研究も相当やったんじゃないのか。
 続いて、素早い指使いで上下に飛ぶ翁。跳ねてるけど、きつくないか?
 俺の心配は当たった。終わり間際に右指がつっかえたのだ。
 俺はかき消すようにフィルを入れる。
 五順目、薫子は容赦なく高速フレーズを紡ぐ。引き離しにかかるのか。とにかく、凄い。例のタンギングで、くっきりとした音列が、バンバンバンと、まるで連打のように効いてくる。俺は合わせて畳み掛ける。井能さんのベースが唸った。
 さて、翁の紫の指先はどうする・・・・。
 心配は無用だった。翁は薫子のフレーズの尻尾に乗って、加速する。
 さては、Harbieを相当研究したな・・・・。新感覚派は嫌いじゃなかったのか?
 等と考えている暇は無かった。本当に速い。こんな細かい譜割で弾ききれるのか・・・・。
 と思った瞬間、外した!中途半端な所で。
 俺はフォローせず、逆に崩しにかかる。今は喰い合う時だ。
 だが、翁は音が混濁し、分断しかかるのも恐れず、躊躇せず弾き切る。フレーズは説得力を無くさない。そして、冷静に左手の連続に変化するコードを挟んで、次のフレーズに行く。
 背中が落ち着いている。
 薫子は何も気にせず六順目に向かい、一層大きな音で紡ぐ。
 何処で仕掛ける?
 俺に翁を心配して、迷っている暇は無い。薫子の前では。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-10-20 01:46 | 第三話 「紫の指先」
 おっと、という顔をして、井能さんが振り向いた。知ってか知らずか翁がトンとコードを落とす。俺はその助け船ですら喰うつもりでスネアの縁を叩く。井能さんは、急激に下へ降りて、低音をドンと鳴らす。
 すみませんね、一人で場を作らせちゃって。まあ尤も、俺は援護する気はないが。
 俺は、間合いを詰めていく。だが、油断すれば切られる。何せ相手は“葉隠れの侍”だ。
 しかし、彼の低音捌きは本当に凄いなあ・・・・。簡単には斬り込めない。油断すると己を失ってしまう。
 当然のことだが、俺もまだまだ・・・・だな。時々、感嘆し、焦り、導かれ、反発しながら、俺は井能さんとのやり取りを楽しむ。
 終わりが近づく。俺は軽くフィルして、井能さんはビートを刻みだす。うーん。これも凄いクールなグルーヴだ。
 薫子のアルトと翁の右手がテーマをユニゾンして吹奏する。
 左手がコードを落とす。
 俺は少し派手なフィルを入れる。
 さて、楽しい「入れたり出したり」の時間だ。だが、それは薫子と翁のではない。俺とお前達のだ。
 すっと薫子が入る。Shorterが睨み返しそうなクールなフレーズ。あいつ、“Milesはファシストよ。私は嫌い”と言ったくせに。どの口がこんなフレーズをすらすらと歌ってるんだ。
 それを受けて、換わった翁がするすると弾く。速い!
 よくもこんな綺麗なフレーズを高速で展開できるな。尊敬するよ、全く。
 二順目、薫子はキイキイと高い音から入って急滑降する。
 速すぎて取り付く間が無い。だが、俺はスネアを乱暴に鳴らす。手早く、それでいて複雑なフレーズを組み合わせる薫子。
 簡単には盛り上げさせないつもりだな。
 グルーヴはがっちり井能さんが確保してくれてる。
 俺は行かなきゃだめだ。
 バスとフロアを連打して土台から崩そうとする。
 それでも薫子は崩れずに吹き切って、翁が滑り込んでくる。左右のオクターブ違いでゴツゴツとしたフレーズで攻める。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-10-06 22:34 | 第三話 「紫の指先」
 “俺が一緒にやってきたベーシストは、エゴを出せないヤツばかりだった。”
 じゃあ、演奏が上手くて、かつエゴを示せるベーシストと演奏する時には、今のように、一歩、退くというのか。
 ひょっとして俺は、ベーシストの奏でる音楽が、よく分かってなかったんじゃないか。
 バンドの中で退いた存在だと、リズムを司るのは自分だと、ベースは自分の支配下にあるものだと、無意識に思っていたんじゃないか。
 そういう奢った気持ちがあるから、責任感ではなく、義務感に支配されるんじゃないのか。
 今、俺が聴いている井能さんの演奏と、あゆみの演奏の違いは何だろう。確かに技術の差はあるだろう。だが、井能さんだって、あゆみのようにはファズの効いた音は鳴らせないだろう。
 俺が知っているのはそれだけで、実は俺はまだ、あゆみの本当の音楽を知らない。
 あいつは父親の存在という圧迫感の中で、自分の解放を探るためにベースを手にしたんだろう。
 そして、薫子と、冬美と、輝広という、性格は悪いにしても開放的な考え方を持っている(だろう)共演者を得た。だが、最も理解してやるべき楽器を演奏する俺は、未だ昔の硬い考え方に縛られている・・・・。
 俺が、そういう固執から自分を解放してやることが、あゆみを解放してやることになるんじゃないか。
 夢の中で黒猫のエリックは言った。“形式として自由を求めれば、すぐさま、抑圧は君を取り囲み、飼い慣らすだろう”と。俺はまだ、型に填めて考えすぎているんじゃないか。
 そんなことを閃いていた時、アルトを抱えて、俺を見る薫子に気が付いた。右手を小さく振って、ビートをキープしている。
 うん。冷たいけど、優しい目だ。ありがとう。その視線が俺を覚醒する。残りの小節は少ないが、俺は退くのは止めた。
 もっと良く聴いてみよう。そして、相手の共犯者となるんだ。
 俺は井能さんの一瞬の間を捉えてハイハットで切り込む。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-09-15 00:45 | 第三話 「紫の指先」
     十二

 俺は軽くフィルしてシンバルをそっと揺らす。
 最後はまた、アルコのベースをバックに、薫子がテーマを変奏する。ゃっぱり、このアレンジなら、フルートのソロを先にした方が良かったか。
 だが、井能さんがしっかりとテーマを奏でてくれたおかげで、上手くまとまった。カデンツァは、無しだ。
 ふん。今度は結構な量の拍手があった。冬美は拍手しない。
 俺は薫子がアルトに持ち替えるのに、ドラムの側に来た時に言った。「冬美が睨んでるぞ」
 「嫉妬よ。ああいう時は気にしない方が良いわ。・・・・触ったら切られるだけ」と薫子は言った。
 嫉妬って、お前らやっぱり、付き合ってんの?
 などと考えている間もなく、井能さんが速いテンポでウォーキングした。やっぱり、フォービートに関しては、この野太さは、あゆみにはまだ出せないな。
 Harbieの“The Sorcerer”。この曲は翁のリクエストだ。きっと挽回するつもりなのだろう。
 薫子は例の不敵なテーマを、この前よりも切れ重視で吹いた。俺はより乱暴に入っていく。そして、テーマの終わりに入る部分で、派手におかずを入れてやる。
 それを無視して、翁はトンと美しく冷静にコードを入れた。
 そして、もう一度、右手のシングルトーンとアルトのユニゾンでテーマを繰り返す。ベリー・クール。俺も嫉妬かな。変則的なおかずを入れてやったが、二人は崩れない。そしてまた、左手がコードを美しく落とす。
 ベースが躍り出た。ソロは井能さんからだ。
 うーん、凄いな。上下の跳躍と、楽器の鳴らせ方が圧倒的だ。
 なんという開放感、なんという歌いっぷり。おっと、うっかりするとリズムを失いかける・・・・。俺も応じるか。いや、今日はもう少し大人しくしよう。せっかく、尊敬できるベーシストと共演しているのだから・・・・。
 待った!
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by jazzamurai_sakyo | 2010-09-01 23:37 | 第三話 「紫の指先」
2010年8月11日、18日、25日は、夏休みのため中止です。
2010年9月から月2回の放映で行きます。
予定は第一、第三水曜日です。

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by jazzamurai_sakyo | 2010-08-11 23:44 | 第三話 「紫の指先」