ブログトップ

ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

jazzamuray.exblog.jp

1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

<   2009年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

 即興とは、永遠の闇そのもの。ジャズとは滑稽な、空回り。まるで変体オヤジが冠した通り、道化そのもの。
 それを知るはずの指先は、疾走を課すが、飛べずに躓き、泣いている。義務感の波に絡め獲られるからだ。
 だが、迷っている暇は無い、薫子の前では。
 一方、悩む女と悩む男は、お互いを知る。ビール瓶が割られ、グルーヴは開放された。その切り口をお互いに突きつけたとしても、楽しめば良いだけだ。行き先は告げなくて良い。

 次回 第三話 「紫の指先」!

 彗々たる星斗にも勝りて、夜が吾等の裡に開きたる永遠の眼こそ聖なれ。


 ※ 次回開始は09年10月を予定しています。
   更新は毎週水曜日の予定・・・・、ですが、全部できてないので、滞る可能性アリです。

 ※ テルの名前を変更しました。 瀧上元輝 → 瀧上輝広
   直ってない箇所があったら、お教え下さい。
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2009-07-29 00:18 | 次回予告
 出来れば、あの冬美と薫子の会話も憶えていたくはなかったが、それは一言一句、俺の記憶から消えることはなかった。
 「癩王のテラス」の練習は、活発になった。必ず週二日は練習し、練習の中で生まれたアイデアや、持ち寄った複数の新曲のアイデアを広げることに取りかかった。
 冬美と薫子は、以前と変わらず、冷たく美しい顔をしていた。冬美は、以前より笑う様になった気がした。
 「青い光」について、薫子は練習再開の冒頭、「出来た曲として手を付けずに置いておきたい。それと、私の中で冷却期間が欲しいので」と言った。
 あの曲を演じたことが、奴等にとって良いことなのか、それとも違うのか、俺には分からなかった。
 そして、「青い光」の歌詞の意味について、アキコ、という名前について、俺は薫子に尋ねることが出来なかった。
 「ねえ、カミさんの言ったこと、正しかったわよ」
 ある日の練習後、俺はあゆみと紫野山さんの店で飲んでいた。
 俺はあゆみにも、尋ねたいことが二つあった。
 一つはリズムのこと、もう一つはボイド氏のことだったが、なかなか言い出せないまま、過ぎていた。
 「何が?」
 「宮坂さんのホームページが更新されて、この前の、“underground garden”のライブの詳細レポートが掲示されてた。でも少々、媚薬が効きすぎたんじゃない?」
 「媚薬って、どういうこと?」
 「ホームページ見たら、分かるわよ」と、あゆみはウインクした。
 翌日、俺は職場のパソコンで宮坂のホームページを見た。
 その瞬間、俺は恥ずかしさのあまり、耳たぶまで熱くなってしまった。
 レポートの頭には、少々、露出が長めで、残像がオーラの様に動いている、メンバー五人の演奏中の写真が並べられた上に、ご大層に、ヨーロッパの廃城の写真がオーバーラップで飾られ・・・・、次の様な文言が書かれていた。
 ・・・・「癩王のテラス」は、失われゆく「地下王国の園」において、聖なる暗闇と陽光の戦い、そして再生を祝う歌を奏でた。
 その歌は、偉大なるKing Crimsonの名曲、“Starless”に匹敵する聖歌だった。・・・・云々と。
 ああんの野郎。ああああーっ。
 ・・・・めっちゃめちゃ恥ずかしい。
 こりゃ、アレンジ、やり直しだな。
 でも、冬美と薫子はウンと言わないだろうな、恐らく。
 どうしよう・・・・。
 少し二日酔い気味の頭に鈍痛が走り、・・・・俺は苦笑した。

     (第二話 終)
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2009-07-22 00:09 | 第二話 「青い光」
 「ごめんね。私が冬美に、どんなことをしてあげても、冬美を助けることはできないと分かっているし、何かを変えることができると思って、あの歌詞を書いた訳じゃないの。
 でも、どうしても、あの歌詞をあの曲に載せたかった。
 あの曲を作った時、キーワードだけが頭に浮かんで、最初からあの歌詞が出来ていた訳じゃないんだけど。
 でも、神ノ内さんの作った構成の流れに乗って、あの場所のことを、そして、彼女の存在を、私と冬美の中で昇華することができたら、私達は次の場所に動けるかもしれない、と思ったから」
 「それは、分かっていた。・・・・本当は思っていた、あの構成はレクイエムみたいだって。だから、最後のテーマを、僕が弾くんだって、神ノ内さんが言った時、困惑したけれど、本当は少し嬉しかったかもしれない。
 でも、僕、あの曲に入り込みすぎて、ちょっと、変になってしまった。僕が何時も夢に見るあの景色、あの赤い炎から、僕が抜け出るための装置のように、あの曲は僕を導いた。
 さっき言ったこと、嘘だよ。歌っても良いよ。止めてくれとは、僕は、もう言えない・・・・」
 冬美がヴァイオリンケースを静かに床に置き、薫子に抱きつくのが、隙間越しに見えた。
 「ごめんね。歌うこととか、演奏することしか、私は、できない。冬美を助けることはできない。
 でも、私は何時でも、冬美と一緒に、あの夢の中に行く。
 また、二人で行こう、あの湖岸道路に。そして、一緒にアキコさんを捜しましょう」
 誰だ。アキコ、って。
 俺は静かにその場を離れた。聴いてはいけないことを聴いてしまったのではないかと、動揺した俺は、トイレで少し、尿を便器から外してしまった。
 ・・・・座敷に戻ると、YAEが冬美のいた席に座っている。少し頬が赤い。輝広とあゆみが、にやにやとしている。
 「何だ、YAE。飲み過ぎか?高校生が酒に飲まれちゃイカンだろ」
 「そんなんじゃない。この程度で酔う訳ないだろ」
 あゆみは、YAEの肩を抱いて、「YAEちゃんねえ、冬美ちゃんに一目惚れなんだって」と言った。
 「え。嘘だろ。美少年と野獣じゃないか」と言った次の瞬間、俺はYAEの跳び蹴りを食らっていた。
 ・・・・それから後のことは、あまり憶えていない。
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2009-07-15 00:41 | 第二話 「青い光」
 ・・・・おい。お前、今、何でこんなオヤジとあゆみが付き合ってたんだ、と思っただろ」
 俺は、図星を指されて黙った。
 「人間ていうのは、色々、難しいんだ。何も問題を抱えていない奴なんていない。だから、俺みたいな、ねじ曲がった魂を歌うロックを演る男は、永遠にニーズがあるんだ」
 何、言ってんだ、このオヤジは。「すみません、トイレ行って良いですか?」俺は言うに事欠き、そう言って逃げた。
 背後から、ボイドが「あの薫子っていう女には気を付けろ」と言う声が聞こえた。
 俺は振り返ったが、既にボイドは部屋に入った後だった。
 店の入り口付近から冬美の声が聞こえた。俺は、下駄箱の裏から、その隙間越しに声を聞いた。
 「あの歌詞、どういう意味なんだ?」
 「聴いた通りよ」
 薫子が、諭す様な静かな声で話した。
 俺は、動くことが出来ず、立ち聞きすることになった。
 「何故、あんなことを歌うんだ」
 「私、冬美を辛くしちゃたかな?」
 「そんなことを言ってるんじゃない!」冬美は強く言った。
 「・・・・悪い。薫子の言うことが正しいな。今日、初めて聴いたからだろう。やっぱり、少し辛かった。
 忘れようとしても忘れられないことを、あんな形にされてしまうのは、辛い。僕はあの“湖岸”に居続けることができなくなってしまう」
 「冬美はあの場所にずっといたいの?」
 「・・・・。いや。分かっている。きっとそうじゃない。ただ、諦念することは、僕にはできないから・・・・」
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2009-07-08 00:15 | 第二話 「青い光」
 「私は分かる」と、あゆみが言った。「カミさんと知り合ってから、このバンドが急に動き出した気がするから」
 「大体、前はバンドと認識して活動していたかどうかも、怪しい」と輝広が枝豆を噛みながら言った。
 「・・・・そうね。怪しいわ。だから、今日は曲をちゃんと演れたことが嬉しいの」あゆみの目が据わりつつある。
 ・・・・当の冬美は、ペリエのグラスに口を戻し、かといって飲みもせず、横を向いていた。
 それから、俺達は短い沈黙の後、他愛もない話を続け、酒を飲んだ。
 「・・・・僕、帰るね」
 十一時を過ぎ、輝広とあゆみが、他のバンドのメンバーの席に行って、飲み出した頃、冬美はそう言った。
 「ああ、明日、学校か」
 「うん」
 「冬美、・・・・さっきの話な」
 「うん?」
 「お前がどんな所にいるのか知らんが、もしお前がそれを望むのなら、そして、少しでも俺が出来るならば、違う場所に連れて行ける様に、努力するが?」
 俺は頭の中で、さっきの激情的な演奏を思い返していた。
 「・・・・そうだね。オッサンがもう少し上手くなったらね」
 冬美は俺の目を見ずに言った。
 「ああ、頑張るよ。・・・・おやすみ」
 “どうしたんだよ。まるで子供みたいだな”俺は座ったまま見送った。
 座敷の入り口に近い所にいた薫子が、冬美に声をかける。
 だが、無視して冬美は出ていく。薫子は追いかけた。
 何かおかしいな。俺はそう思って、席を立ち上がったが、座敷を出ようとした時、出会い頭にボイド氏に捕まった。
 「こんな時代に、プログレ風の、長ったらしい、忍者屋敷みたいな曲を演奏するとはな」
 「そうですか。でも、プログレだと思って演っている訳じゃ無いんでね」向こうは、既にかなり出来上がっている。だが、酔い酔いに関しては、こっちも負けてない。
 「ところで、あゆみとはどういう関係なんです」
 「そんなこと聞きたいか」
 アンタとの話題が、今、それしか見つからないんだよ。
 「あゆみは、今のバンドの前のベーシストだ」
 「そうなんですか」
 「少しの間だけ、付き合ってもいたけどな。
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2009-07-01 00:04 | 第二話 「青い光」