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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

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 私はその人に、よくライブとか芝居に一緒に連れてってもらった。新譜を買うと、必ず呼んで、私に感想を言わせるの。つまんないこというと、すぐアホ扱いされるから怖かったけど、ちょっとしたスリルがあって、楽しかった。
 特にCocteau Twinsの“Treasure”を聴かされた時は、なんか、付き物が落ちたみたいにスッとした。ゴリラの音楽教師の背後霊が落ちたのかな。つまんない現実から、すっごく遠く離れた幻想の世界に連れて行かれて、最初の闇から解放された。
 「これ、ドラムは打ち込みなのよ。チープな機材みたいね。
 ねえ、古典的技術とか、音楽的権威は私達には関係ないのよ。アイデアと、それを実現できる方法を探す気さえあれば、自分だけの世界を作ることが出来る」と彼女は言った。
 私は、ホントに彼女の部屋に行ってたなあ。もちろん、勉強してる時と、彼氏が来てる時のお邪魔は避けました。レコードは貸してはくれなかったけど、部屋に行って回すのはオーケーだったから、彼女が持っているレコードのありったけを、テープに録音して聴いたな。
 The Pop Group、PIL、Joy Division、Bauhaus、Echo and The Bunnymen、Durutti Column、The Cult、Felt、The Jesus and Mary Chain・・・・。もちろん、Sex Pistols、The Clash、The Jam。
 今から考えたら、全部イギリスのバンドだった。
 そして、彼女が「飽きた」と言って、部屋の片隅で埃を被るままにしていた、ベースを只でもらったんです・・・・。
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by jazzamurai_sakyo | 2009-10-28 01:30 | 第三話 「紫の指先」
 もう、何もかも全部ぶち壊して、お父さんと、従順なだけのお母さん、姉貴との生活を、ぶっちゃけチャラにしてしまいたい、って思っていた。
 そんな単純馬鹿な私を冷やしてくれて、救ってくれたのは、テキトーに入った公立高校で、最初に付き合った男子のお姉さんだった。
 彼とは、すぐ冷えた。何で付き合ったのかも覚えていない。話はあまり合わないし、セックスするのが、ホント疲れるだけだったなあ。そろそろ、嫌だな、あんまりしたくないなあ、って言おうと思ってたら、向こうから言ってきた。オマエとは合わないって。そのつまらなさそうな目で見られたら、俺もつまらないだって。あんなに目血走って、はしゃいでたくせに・・・・。
 そうやって別れたけれど、彼のお姉さんは、彼と別れてからも私を可愛がってくれた。
 「ホント、頭の悪い弟でゴメン。代わりに私と付き合う?」と言われた時は、そっち?って、ちょっと退いたけど。「そうじゃなくて、君、弟の友達の中では、イッてる目をしてるから面白そうだし、時々話しでもしに来てよ」って。
 彼女は、頭のいい人だった。目を見て、話しを聴いてれば分かった。高校に行くのは人生の無駄だって言って、高校行かずに予備校行って、大学検定合格を目指していた。でも、時々は特別講座の費用が要るとか言って、親から金を引きだしては、ライブハウスに行ったり、芝居を見に行ったりしていた。
 もの凄く斜に構えた見方をする人だった。私は、私によく似た人だと思ってた。パンク、ニューウェーブが好きで、黒い服しか着なかった。
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by jazzamurai_sakyo | 2009-10-21 00:06 | 第三話 「紫の指先」
 そう言えば、お父さんと上手く行かなくなったのも、鶴亀算の頃だったなあ。
 丁度その頃、生理が始まったのよねん。この始まった年齢が、姉貴が始まった歳よりも一歳も早かったの。その夜、夕食にお赤飯が出て・・・・。何で、あんなもん出すんだろ?
 お父さんは、一瞥しただけで、ずっとビール飲んでたなあ。
 別に、優しい言葉をかけて欲しかった訳じゃなかったけど、姉貴の「その日」には、笑っていたのになあ。そう言えば、姉貴は恥ずかしがる訳でも無く、何時もと同じ無表情だったなあ。
 中学に入ってからは、激しく成績が下がったの。だって、算数が分からない私に数学が分かる訳ないでしょ。大好きだった音楽も、中学の授業では大嫌いになった。担当の先生が、ゴリラみたいなババアで、一糸乱れぬ合奏の練習ばかりさせるの。
 粘液質で、本当に嫌いだった。
 ピアノが出来るとは、だから絶対言わなかった。
 ピアノは姉貴と一緒に習っていた。でも、中学に入る前に止めちゃった。比べられるのが嫌だったから。
 平均より良かったのは英語と美術だけかなあ。
 こうなると、もう、お父さんは小言しか言わなくなるわけ。中二の夏、まあ、似た様な将来の展望の無い女友達とつるんで馬鹿ばっかりやって、色んな所で色んな人とぶつかって。
 それで、あんまり面白くないから、友達の紹介でつまんない男子と付き合って。
 髪を染めた時には、お父さんにはもう完全に無視されたの。
 ただ、私のいない所で、お母さんに何か言っていたことは知っていた。そして姉貴は、・・・・無表情のままだったなあ。
 私はただゲラゲラ笑って毒づいて・・・・。でもその頃、何もかも上手く行かない感じがして、全部が全然面白くなかった。周りはね、「お姉さんはとても優秀なのに、何故、この妹は・・・・」という目で見てるし、怖々「頑張ろうね」って、そればかり言うのよねん。
 私は頑張るのはゴメンだった。
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by jazzamurai_sakyo | 2009-10-14 00:33 | 第三話 「紫の指先」
     一

 私はバカな女です。
 何処がバカかって、まず算数ができない。
 小学校五年までは順調だったんだ。「本当に、賢いわねえ。お姉さんそっくりね」とか言われて。
 それが鶴亀算で全然ダメになっちゃった。
 分かります?鶴亀算って。
 鶴の足は二本で、亀の足は四本ですね、塀の下に足が二〇本見えていて、塀の上に頭が六つ見えてますが、鶴は何羽、亀は何匹いるでしょう、ってやつよ。
 そんなモン、足の形とか、頭の形で分かるでしょう?
 第一、亀なら、塀の下から足が見えていれば身体全体見えてるから、それを数えた方が速いです。って、手、挙げて先生に意見した私はそこからして馬鹿でしょう?
 思えば、小学校の頃から、先生と名の付く人の話を、マトモに聞いたこと無かったな。私は、人の話は斜め後ろからしか聞かないんだ、何でも。
 担任の先生は、いやそうじゃなくて例えば鶴が六羽いるとしたら足は一二本だから、二〇から一二引くと足が八本余っちゃうわねえ。で、亀と鶴の足の本数の差は二本だから逆に余った八本うんたらかんたら・・・・。
 テルに言わせれば、あれは中学から数学で方程式を習うにあたって、数学的思考法を養うことを目的に勉強させるんだって言うんだけど・・・・。何のために必要なのか、未だに分からない。
 三つ上の姉貴は、私と比べて本当に賢かった。私みたいに鶴亀算には引っかかりもしなかった。ムカデ・ゲジゲジ算だって問題なかったと思う。
 何でもすぐに出来ちゃうし、分かっちゃう。
 それに、親に口答えすることもなかった。姉貴はお父さんのお気に入り。特にお父さんには従順だったから。
 それに比べて、私は馬鹿でしょう?加えてお父さんに口答えしちゃうんだこれが。お父さん、大学の先生だったからかなあ、私の言うことなんか聞かないの。
 だから、私は厄介者。
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by jazzamurai_sakyo | 2009-10-07 00:27 | 第三話 「紫の指先」