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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

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 俺はアプローチを変えて、プッシュしてやる。まるで示し合わせたかのようだな。
 いや、違う。恐らく、翁は薫子を認めたな。だから、導かれる所に行こうとしているのではないのか。だが、薫子の性格からして、それはなかなか困難なお付き合いだぞ・・・・。
 三順目、改めて曲に向き直ったように、音を選ぶ薫子。この曲の使える音は広い。噛み締めるように付き合う翁。
 やるな。俺はハイハットを開いて連打し、リズムを広げる。
 四順目、曲想を裏返したかのように、上下に動くフレーズを正確に吹く薫子。お前はひょっとしてMilesのモード研究も相当やったんじゃないのか。
 続いて、素早い指使いで上下に飛ぶ翁。跳ねてるけど、きつくないか?
 俺の心配は当たった。終わり間際に右指がつっかえたのだ。
 俺はかき消すようにフィルを入れる。
 五順目、薫子は容赦なく高速フレーズを紡ぐ。引き離しにかかるのか。とにかく、凄い。例のタンギングで、くっきりとした音列が、バンバンバンと、まるで連打のように効いてくる。俺は合わせて畳み掛ける。井能さんのベースが唸った。
 さて、翁の紫の指先はどうする・・・・。
 心配は無用だった。翁は薫子のフレーズの尻尾に乗って、加速する。
 さては、Harbieを相当研究したな・・・・。新感覚派は嫌いじゃなかったのか?
 等と考えている暇は無かった。本当に速い。こんな細かい譜割で弾ききれるのか・・・・。
 と思った瞬間、外した!中途半端な所で。
 俺はフォローせず、逆に崩しにかかる。今は喰い合う時だ。
 だが、翁は音が混濁し、分断しかかるのも恐れず、躊躇せず弾き切る。フレーズは説得力を無くさない。そして、冷静に左手の連続に変化するコードを挟んで、次のフレーズに行く。
 背中が落ち着いている。
 薫子は何も気にせず六順目に向かい、一層大きな音で紡ぐ。
 何処で仕掛ける?
 俺に翁を心配して、迷っている暇は無い。薫子の前では。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-10-20 01:46 | 第三話 「紫の指先」
 おっと、という顔をして、井能さんが振り向いた。知ってか知らずか翁がトンとコードを落とす。俺はその助け船ですら喰うつもりでスネアの縁を叩く。井能さんは、急激に下へ降りて、低音をドンと鳴らす。
 すみませんね、一人で場を作らせちゃって。まあ尤も、俺は援護する気はないが。
 俺は、間合いを詰めていく。だが、油断すれば切られる。何せ相手は“葉隠れの侍”だ。
 しかし、彼の低音捌きは本当に凄いなあ・・・・。簡単には斬り込めない。油断すると己を失ってしまう。
 当然のことだが、俺もまだまだ・・・・だな。時々、感嘆し、焦り、導かれ、反発しながら、俺は井能さんとのやり取りを楽しむ。
 終わりが近づく。俺は軽くフィルして、井能さんはビートを刻みだす。うーん。これも凄いクールなグルーヴだ。
 薫子のアルトと翁の右手がテーマをユニゾンして吹奏する。
 左手がコードを落とす。
 俺は少し派手なフィルを入れる。
 さて、楽しい「入れたり出したり」の時間だ。だが、それは薫子と翁のではない。俺とお前達のだ。
 すっと薫子が入る。Shorterが睨み返しそうなクールなフレーズ。あいつ、“Milesはファシストよ。私は嫌い”と言ったくせに。どの口がこんなフレーズをすらすらと歌ってるんだ。
 それを受けて、換わった翁がするすると弾く。速い!
 よくもこんな綺麗なフレーズを高速で展開できるな。尊敬するよ、全く。
 二順目、薫子はキイキイと高い音から入って急滑降する。
 速すぎて取り付く間が無い。だが、俺はスネアを乱暴に鳴らす。手早く、それでいて複雑なフレーズを組み合わせる薫子。
 簡単には盛り上げさせないつもりだな。
 グルーヴはがっちり井能さんが確保してくれてる。
 俺は行かなきゃだめだ。
 バスとフロアを連打して土台から崩そうとする。
 それでも薫子は崩れずに吹き切って、翁が滑り込んでくる。左右のオクターブ違いでゴツゴツとしたフレーズで攻める。
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by jazzamurai_sakyo | 2010-10-06 22:34 | 第三話 「紫の指先」