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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

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     十四

 緊張が一気に解けた溜息と、申し分の無い拍手があった後、「では、最後に、あゆみちゃんの歌で、終りにします」と薫子が小さくアナウンスした。
 ボーカルマイクが用意される。
 あゆみは客席から舞台へ上がったが、かなり緊張している。
 「ダメだ。ベース持ってないと落ち着かない」
 ボーカルマイクを素通りして、俺の前に来たあゆみは言った。
 「ベースを弾いている時と特別違うようには感じるなよ」
 「私の歌を聴いたら、きっとカミさんと私、合わなくなるよ」
 何、女みたいなこと言ってんだ、こいつ。
 「大丈夫。俺はあゆみのことを良く知っている」
 「何を」
 「鶴亀算の嫌いなことと、ハスキーな良い声だということ」
 すこし、あゆみの頬が赤くなったような気がした。
 翁がイントロを弾く。まだモノになっていない、あゆみのきれいなオリジナルだ。

 「酷く 孤独 こども
  響く 届く ことも
  期待 したい 何か
  誰か 優しい 仕草

  けれど 待ってて どうするの
  自分を 押し込め 殺しちゃう
  そういうのって もう止めない?

  私と貴方 軋轢を 楽しみたい
  お互いの 孤独を 確認したい
  みんな孤独 だから 楽しいの
  真剣に孤独 だから 楽しいの」

 ふふん。絶対に薫子には書けないし、歌えない歌だな。
 薫子のフルートが、優しく絡む。

 「みんな 孤独 こども
  大人に なんて なれない
  なのに 貴方は 自分だけ
  孤独じゃ ないと 言ったのよ

  だから 私は貴方と さよならする
  私たち 対等でないなら 遊べない
  そういうのって もう止めない?

  私は貴方の 寂しさが 好きだった
  お互いの 孤独が 引き寄せた
  二人孤独 だから 楽しいの
  真剣に孤独 だから 楽しいの

  馴れ合いなら いらない
  対等でないなら 遊ばない だから、バイバイ」
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by jazzamurai_sakyo | 2011-05-04 08:30 | 第三話 「紫の指先」