俺はアプローチを変えて、プッシュしてやる。まるで示し合わせたかのようだな。
いや、違う。恐らく、翁は薫子を認めたな。だから、導かれる所に行こうとしているのではないのか。だが、薫子の性格からして、それはなかなか困難なお付き合いだぞ・・・・。
三順目、改めて曲に向き直ったように、音を選ぶ薫子。この曲の使える音は広い。噛み締めるように付き合う翁。
やるな。俺はハイハットを開いて連打し、リズムを広げる。
四順目、曲想を裏返したかのように、上下に動くフレーズを正確に吹く薫子。お前はひょっとしてMilesのモード研究も相当やったんじゃないのか。
続いて、素早い指使いで上下に飛ぶ翁。跳ねてるけど、きつくないか?
俺の心配は当たった。終わり間際に右指がつっかえたのだ。
俺はかき消すようにフィルを入れる。
五順目、薫子は容赦なく高速フレーズを紡ぐ。引き離しにかかるのか。とにかく、凄い。例のタンギングで、くっきりとした音列が、バンバンバンと、まるで連打のように効いてくる。俺は合わせて畳み掛ける。井能さんのベースが唸った。
さて、翁の紫の指先はどうする・・・・。
心配は無用だった。翁は薫子のフレーズの尻尾に乗って、加速する。
さては、Harbieを相当研究したな・・・・。新感覚派は嫌いじゃなかったのか?
等と考えている暇は無かった。本当に速い。こんな細かい譜割で弾ききれるのか・・・・。
と思った瞬間、外した!中途半端な所で。
俺はフォローせず、逆に崩しにかかる。今は喰い合う時だ。
だが、翁は音が混濁し、分断しかかるのも恐れず、躊躇せず弾き切る。フレーズは説得力を無くさない。そして、冷静に左手の連続に変化するコードを挟んで、次のフレーズに行く。
背中が落ち着いている。
薫子は何も気にせず六順目に向かい、一層大きな音で紡ぐ。
何処で仕掛ける?
俺に翁を心配して、迷っている暇は無い。薫子の前では。
いや、違う。恐らく、翁は薫子を認めたな。だから、導かれる所に行こうとしているのではないのか。だが、薫子の性格からして、それはなかなか困難なお付き合いだぞ・・・・。
三順目、改めて曲に向き直ったように、音を選ぶ薫子。この曲の使える音は広い。噛み締めるように付き合う翁。
やるな。俺はハイハットを開いて連打し、リズムを広げる。
四順目、曲想を裏返したかのように、上下に動くフレーズを正確に吹く薫子。お前はひょっとしてMilesのモード研究も相当やったんじゃないのか。
続いて、素早い指使いで上下に飛ぶ翁。跳ねてるけど、きつくないか?
俺の心配は当たった。終わり間際に右指がつっかえたのだ。
俺はかき消すようにフィルを入れる。
五順目、薫子は容赦なく高速フレーズを紡ぐ。引き離しにかかるのか。とにかく、凄い。例のタンギングで、くっきりとした音列が、バンバンバンと、まるで連打のように効いてくる。俺は合わせて畳み掛ける。井能さんのベースが唸った。
さて、翁の紫の指先はどうする・・・・。
心配は無用だった。翁は薫子のフレーズの尻尾に乗って、加速する。
さては、Harbieを相当研究したな・・・・。新感覚派は嫌いじゃなかったのか?
等と考えている暇は無かった。本当に速い。こんな細かい譜割で弾ききれるのか・・・・。
と思った瞬間、外した!中途半端な所で。
俺はフォローせず、逆に崩しにかかる。今は喰い合う時だ。
だが、翁は音が混濁し、分断しかかるのも恐れず、躊躇せず弾き切る。フレーズは説得力を無くさない。そして、冷静に左手の連続に変化するコードを挟んで、次のフレーズに行く。
背中が落ち着いている。
薫子は何も気にせず六順目に向かい、一層大きな音で紡ぐ。
何処で仕掛ける?
俺に翁を心配して、迷っている暇は無い。薫子の前では。
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by jazzamurai_sakyo
| 2010-10-20 01:46
| 第三話 「紫の指先」