第二話 「青い光」 第11節の2
あゆみがベースを背中に回し、エレピでコードを落とす。
テープに忠実に。
輝広は、時折、水滴の様な音の粒を落として、波紋を作る。
冬美の弾くイントロが重く音場を支配する。俺の意図したことではあったが、少し重すぎる・・・・。
気が付くと、薫子はフルートを抱えながら、俺を見ていた。
このパートでは叩かない俺は、その瞳を見返した。
俺は口を動かした。“歌え。後戻りは出来ない”と。
薫子はコクンと頷き、振り向いた。
「 思いは決して死なない
旅に終わりはないから
覚悟は決して絶望しない
望みは絶えないから
澱んだ土を蹴り 私は船に乗る
帆は光を受ける
青い光
幾千年の月日が経とうとも、私は決して死なない
光に抱かれて、船は永久に流離う」
間奏で、練習で弾いたことの無い、印象的なフレーズを、短く輝広が弾き、俺は驚いた。
俺には、歌詞の意味が全く分からなかったのに、輝広のフレーズが、まるで、それを全て理解しているようだったから・・・・。
そして、冬美は、フレーズに寄り添い即興しながら、間奏の終わりで、仄暗く薫子を導いた。
俺の心に、その影が落ちた。
「 古傷は決して治らない
火が絶えることはないから
私は流離うしかない
後悔が積み荷とならないように
友よ、手を握り、岸を離れよう
迷い猫を探して
青い光 」
緊張感から身動ぎ出来ず聴き入っていた俺は、その時、冬美が恐ろしい目つきで薫子を睨んでいるのを見た。二番サビ前のブリッジの間、冬美はあゆみとユニゾンしながら、ずっと薫子を見ていた。
「 幾千年の月日が経とうとも、おまえは決して死なない
思いが波立つ海で、私達はまた出会うだろう・・・・ 」
サビの裏側で印象的なメロディーを弾いていた輝広が、歌が終わった所から、音色を変え、ギターでコードを出す。
イントロのコードの繰り返しを。
あゆみは、エレピからベースに持ち変える。そして、ゆっくり大きなリフを弾き始める。
その中に、薫子のフルートが流れ出す。
冬美はエフェクトを調整する。そして、客席の中に降りて、YAEの横まで行き、自分のバランスを確認した。
YAEが、冬美をじっと見ている・・・・。
冬美は、複数の弦を弾き、コーラスで増幅させ、メロトロンの様な音の壁を作り始める。
・・・・自分でこの構成を考えたにもかかわらず、俺は、完全に取り残されて、戸惑っていた。
テープに忠実に。
輝広は、時折、水滴の様な音の粒を落として、波紋を作る。
冬美の弾くイントロが重く音場を支配する。俺の意図したことではあったが、少し重すぎる・・・・。
気が付くと、薫子はフルートを抱えながら、俺を見ていた。
このパートでは叩かない俺は、その瞳を見返した。
俺は口を動かした。“歌え。後戻りは出来ない”と。
薫子はコクンと頷き、振り向いた。
「 思いは決して死なない
旅に終わりはないから
覚悟は決して絶望しない
望みは絶えないから
澱んだ土を蹴り 私は船に乗る
帆は光を受ける
青い光
幾千年の月日が経とうとも、私は決して死なない
光に抱かれて、船は永久に流離う」
間奏で、練習で弾いたことの無い、印象的なフレーズを、短く輝広が弾き、俺は驚いた。
俺には、歌詞の意味が全く分からなかったのに、輝広のフレーズが、まるで、それを全て理解しているようだったから・・・・。
そして、冬美は、フレーズに寄り添い即興しながら、間奏の終わりで、仄暗く薫子を導いた。
俺の心に、その影が落ちた。
「 古傷は決して治らない
火が絶えることはないから
私は流離うしかない
後悔が積み荷とならないように
友よ、手を握り、岸を離れよう
迷い猫を探して
青い光 」
緊張感から身動ぎ出来ず聴き入っていた俺は、その時、冬美が恐ろしい目つきで薫子を睨んでいるのを見た。二番サビ前のブリッジの間、冬美はあゆみとユニゾンしながら、ずっと薫子を見ていた。
「 幾千年の月日が経とうとも、おまえは決して死なない
思いが波立つ海で、私達はまた出会うだろう・・・・ 」
サビの裏側で印象的なメロディーを弾いていた輝広が、歌が終わった所から、音色を変え、ギターでコードを出す。
イントロのコードの繰り返しを。
あゆみは、エレピからベースに持ち変える。そして、ゆっくり大きなリフを弾き始める。
その中に、薫子のフルートが流れ出す。
冬美はエフェクトを調整する。そして、客席の中に降りて、YAEの横まで行き、自分のバランスを確認した。
YAEが、冬美をじっと見ている・・・・。
冬美は、複数の弦を弾き、コーラスで増幅させ、メロトロンの様な音の壁を作り始める。
・・・・自分でこの構成を考えたにもかかわらず、俺は、完全に取り残されて、戸惑っていた。
by jazzamurai_sakyo
| 2009-05-06 22:40
| 第二話 「青い光」