第二話 「青い光」 第11節の5
そういえば、冬美はずっと薫子ばかりを見ている。
そして、時折、俺を。
さすがに、この変調に気付いたのか、輝広が俺に目配せする。
どういうつもりだ、冬美?
俺は、冬美の横顔を注視する。すると、奴は俺を睨んだ。
その目は、何時もの冷静な目じゃなかった。何か、錯乱している様に見えた。
そして、冬美は、薫子とあゆみが演出する幻想の野原に、打ち合わせにない、冷たい音の雨を降らした。
こんなエフェクトを、何時、考えたんだ?
冬美は、音場を荒涼とした冷気で包み込む。
そこに輝広が、突然、フランジャーとオーバードライブで大きな雷雲を作り、轟音の固まりで場をねじ伏せる。
最悪だ。何故、打ち合わせ通りに演じない?
・・・・だが、ひょっとすると、この方が良いのもしれない?
俺は、この混乱の中に長いフィルを入れて、次のパートへの移動を促す。そうだ、この方が繋がる。
次のパートのソロイストは薫子だ。
そのはず、だった。だが、薫子は横を向いて、右手を上げ、人差し指を、冬美に向けた。
冬美の表情が、一瞬凍り付いた。
小節の頭に輝広がガツンとコードを入れた。
あゆみがベースにファズを効かせ、高速変拍子リフを出す。さっきのリフに戻ったのだ。
ソロイストのいない演奏が始まる。これが長くなると、演奏のテンションが、保てなくなる・・・・。そう思った瞬間だった。
冬美は、躊躇したような、らしくないフレーズを口ごもり、そして俺を見た。初めて見る、不安そうな目だった。
俺は忙しなくビートを刻みながら、同じことを言った。
“弾け。後戻りは出来ない”と。
一瞬の躊躇の後、“分かってる”と、薄闇の中で暗く、冬美の赤い唇が動いた。
そして、エフェクターが調節され、生音に近い音で、堰を切ったように、饒舌なフレーズが流れ出す。
そして、時折、俺を。
さすがに、この変調に気付いたのか、輝広が俺に目配せする。
どういうつもりだ、冬美?
俺は、冬美の横顔を注視する。すると、奴は俺を睨んだ。
その目は、何時もの冷静な目じゃなかった。何か、錯乱している様に見えた。
そして、冬美は、薫子とあゆみが演出する幻想の野原に、打ち合わせにない、冷たい音の雨を降らした。
こんなエフェクトを、何時、考えたんだ?
冬美は、音場を荒涼とした冷気で包み込む。
そこに輝広が、突然、フランジャーとオーバードライブで大きな雷雲を作り、轟音の固まりで場をねじ伏せる。
最悪だ。何故、打ち合わせ通りに演じない?
・・・・だが、ひょっとすると、この方が良いのもしれない?
俺は、この混乱の中に長いフィルを入れて、次のパートへの移動を促す。そうだ、この方が繋がる。
次のパートのソロイストは薫子だ。
そのはず、だった。だが、薫子は横を向いて、右手を上げ、人差し指を、冬美に向けた。
冬美の表情が、一瞬凍り付いた。
小節の頭に輝広がガツンとコードを入れた。
あゆみがベースにファズを効かせ、高速変拍子リフを出す。さっきのリフに戻ったのだ。
ソロイストのいない演奏が始まる。これが長くなると、演奏のテンションが、保てなくなる・・・・。そう思った瞬間だった。
冬美は、躊躇したような、らしくないフレーズを口ごもり、そして俺を見た。初めて見る、不安そうな目だった。
俺は忙しなくビートを刻みながら、同じことを言った。
“弾け。後戻りは出来ない”と。
一瞬の躊躇の後、“分かってる”と、薄闇の中で暗く、冬美の赤い唇が動いた。
そして、エフェクターが調節され、生音に近い音で、堰を切ったように、饒舌なフレーズが流れ出す。
by jazzamurai_sakyo
| 2009-05-27 23:55
| 第二話 「青い光」