第三話 「紫の指先」 第二節の1
二
俺の最近の悩みは、金と時間が無いことだった。図書館司書の仕事は給料が良い訳ではないのに、新たな出費に軽く悩まさせていた。
“underground garden”ラストライブ・イベントの後、「癩王のテラス」は週に二日(月、木)、一回三時間程度練習をした。各人が持ち寄った新曲を仕込むことにしたのだが、これに時間を盗られていた。
そのうち、あゆみが持ってきた歌物の曲は、メランコリックなメロディで、最初は「青い光」の様に弄っていたのだが、結局、原曲の雰囲気を残した小曲としてアレンジにした(もちろん、捻るべき所は捻ったが)。ただ、薫子が歌詞を書くのをやんわり拒否し、あゆみも歌詞を一向に持ってこず、加えてあゆみも薫子も歌うのを譲り合ったため、詰めが難航していた。
デモテープに入れられたあゆみの声は、低く、ぶっきらぼうだったが、聴きようによってはSandy Dennyの様に聴こえなくもなく、意外に気に入った俺は、あゆみが歌うことを主張したが、・・・・なかなかウンと言わない。
輝広が持ってきた、ブルースフィーリングの強い曲は何とかものになりそうだったが、これもインストのままにするのか、歌詞をつけるのか、輝広の意思がハッキリせず、ストップしていた。
しかし、あゆみと輝広が持ってきた曲は、明らかに歌ものにすべき曲だった。正直、二人に歌ものが作れるとは思っていなかったが、薫子にやれといったこと、つまり、歌詞を書けと言ったことを、あゆみと輝広には言わずに済む訳でもない。
ひょっとすると、あの曲=「青い光」に対して、あゆみと輝広の意識に、何か囚われの心が出来てしまったのかもしれない。
その「青い光」には、薫子の当面の凍結宣言があった。
俺の最近の悩みは、金と時間が無いことだった。図書館司書の仕事は給料が良い訳ではないのに、新たな出費に軽く悩まさせていた。
“underground garden”ラストライブ・イベントの後、「癩王のテラス」は週に二日(月、木)、一回三時間程度練習をした。各人が持ち寄った新曲を仕込むことにしたのだが、これに時間を盗られていた。
そのうち、あゆみが持ってきた歌物の曲は、メランコリックなメロディで、最初は「青い光」の様に弄っていたのだが、結局、原曲の雰囲気を残した小曲としてアレンジにした(もちろん、捻るべき所は捻ったが)。ただ、薫子が歌詞を書くのをやんわり拒否し、あゆみも歌詞を一向に持ってこず、加えてあゆみも薫子も歌うのを譲り合ったため、詰めが難航していた。
デモテープに入れられたあゆみの声は、低く、ぶっきらぼうだったが、聴きようによってはSandy Dennyの様に聴こえなくもなく、意外に気に入った俺は、あゆみが歌うことを主張したが、・・・・なかなかウンと言わない。
輝広が持ってきた、ブルースフィーリングの強い曲は何とかものになりそうだったが、これもインストのままにするのか、歌詞をつけるのか、輝広の意思がハッキリせず、ストップしていた。
しかし、あゆみと輝広が持ってきた曲は、明らかに歌ものにすべき曲だった。正直、二人に歌ものが作れるとは思っていなかったが、薫子にやれといったこと、つまり、歌詞を書けと言ったことを、あゆみと輝広には言わずに済む訳でもない。
ひょっとすると、あの曲=「青い光」に対して、あゆみと輝広の意識に、何か囚われの心が出来てしまったのかもしれない。
その「青い光」には、薫子の当面の凍結宣言があった。
by jazzamurai_sakyo
| 2009-11-04 00:03
| 第三話 「紫の指先」