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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第2節の1

     二

 その女子高生の言うように、俺は二年前まで、バンドをやっていた。
 辞めたのは、解雇されたからだ。
 今から五年前、二十五歳の頃、俺は働きながら、大学時代のサークル仲間とジャズのバンドをやり始めた。「ジャズ」と言っても、フォービートじゃない。
 一概にジャズと言っても、そのジャンルが包括する範囲は広い。メンバーは、トランペット、テナーサックス、キーボード、ベース、ドラムの五人で、ジャズとしては普通のフォーマットだったが、俺はバンドを組む時に、「ジャズとかロックとか、枠に捕らわれずに、メンバーが表現したいことを明確に表現し、なおかつ、客を楽しませ、空間を共有できるバンド」が作りたいと言い、それを目指した。
 もともとは、俺がメンバーを集めたバンドだったし、確かに最初は、即興演奏に比重を置いた音づくりを指向した。パワー・フュージョンみたいな音しか出せなかったが、何時かは自分達にしかできない、独特の世界を作るつもりだった。
 ただ、客が入らなかった。バブル崩壊直後の日本では、インスト中心の小手先が上手いバンドを聴く客は一握りだった。
 ある日、キーボーディストが、ギタリストを連れてきた。ギターは下手だったが、歌が上手かった。リーダーだった俺は、ギタリストにカッティングだけは格好が付くように練習させることと、少しずつ歌もののナンバーを作るようにした。
 ギタリストは、歌詞を書いた。敵が不明瞭な反抗的な歌詞と、甘い恋愛の歌詞を。
 テクニックがあって、リズムがタイトで、アンサンブルのアレンジが綺麗で、パンキッシュなギターとボーカルの取り合わせは、このバンドを踊れるバンドに変身させた。
 客は集まりだした。
 そして、バンドの音は俺の指向を離れていった。ギタリストとキーボーディストが、二人で書いた曲のみが取り上げられるようになっていった。俺が作る曲は、歌詞が乗せられることもなく、リハーサルされることもなく、却下された。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-01-16 00:30 | 第一話 「黒猫は踊る」