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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第3節の2

 それから俺は、三バンド、一時間強の間、ひたすら酒を飲んだ。今日は二十四時までのイベントらしい。イベントのタイトルは、「ジャズの廃墟」。・・・・なんだか、よく分からない。
 どちらにせよ、クラブ系ジャズのイベントである事は間違いなかった。上手い選曲をリミックスして聴かせるDJ、ハービー・ハンコックの「処女航海」のA面をそのまま演奏する奴ら、ドラムン・ベースの打ち込みの上で、瀟洒なギターを弾く奴。
 きっと鍛冶タケシは、お得意のアート・リンゼイの真似でもして、シャウトしていたのだろう。恐らくは、他の奴等とは比べものにならない高いパフォーマンスで・・・・。
 そして、『癩王のテラス』の順番になった。
 あの女子高生は、カウンターの前にいた俺に気付きもせずにステージ(最も、『North』には、ステージと呼べる程の広さは無く、唯、店の一角であるに過ぎなかったが)に行き、アルト・サックスとシーケンサーをセッティングした。
 「・・・・アルトも吹くのか?」
 彼女は、グレーのブラウス、少しこすれた赤耳のリーバイス、足元は素足にコンバースだった。ライトのせいもあって、彼女の身体は、恐ろしく華奢に見えた。
 メンバーは全員で四人。あの彼女の他は、ギターとテナー・サックスの、ガタイのデカイ痩せた男(その男は黒のTシャツに五〇一で、素足だった)、ヴァイオリンを持った、少し猫背気味の美少年(高校の制服じゃないのか?)、露出部分の多い服を着た、グラマーで普通に美人のベーシストだった。
 続け様に飲んでいたバーボンがそろそろ俺を酔わせていた。「何だ、この統一感の無さは」と俺は一人ごちた。
 落ち着かない組み合わせだ。こんなメンバーで何をやるっていうんだ。
 だが、午後十一時を過ぎようというのに、この時間帯になって、客は集まっている。ただし、その中には、ベースの姉さん目当ての奴も多いようだ。
 そのベースがマイクに話しかけ、「こんばんは。『癩王のテラス』です」と言った瞬間、彼女のアルト・サックスが俺を切り裂いた。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-02-06 00:30 | 第一話 「黒猫は踊る」