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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第5節の1

     五

 最後にベースの姉さんが、他のメンバーから話せと諭された。
 「えー。この曲は、昔のジャズのベーシストで、ちゃーるず・みんがすという人が創った、何とか知事の寓話、という曲ですが。えー。聴いてもらって分かったでしょうが、変な曲なんです。止まってばっかりで。元々、伴奏無しでソロ回しをする曲だそうです。だから、今日は、えー、アイデアの完コピで、す、ね。では、今日はこの曲だけで終わりです。丁度、持ち時間も過ぎました。
 えーっと、カオルン、何だっけ。ああ、そう。
 業務連絡、業務連絡。神ノ内さーん。来てたら、打ち上げに来てください。帰らないようにねー。えっと、カオルンだけじゃなくて、あゆみも待ってるわん。うふふ」
 ・・・・ベースの姉さんは舌足らずに話し、じゃあね、と言って演奏は終わった。
 その間、他の奴らは客の方を見向きもしないで、機材を撤去していた。
 俺を含めて、客の殆どは呆気にとられ、虚ろに拍手した。
 一方、少数の人間だけが、何時ものことさ、と言わんばかりに、皮肉に笑っていた。コアなファンなのだろう。その中でも、一際気持ちの悪い奴がいた。格好が気持ち悪いというのではないか、口元と、目元のだらしなさが、この男の本質を表している。まあ、どんなバンドにも、こういうファンはいる。バンドを甘やかすか、不当に批判して、結局はプラスにならない存在だ。心と肉が合わさった所で音を楽しむことが出来ない奴らだ。
 それにしても、さして耳が良いとは思えない、こんないい加減な客を前に、あれだけ集中した音を聴かせるのはもったいないと、俺は思った。
 ・・・・全てのプログラムが終わった後、やはり俺は打ち上げに付いて行った。飲みましょうと言われたら、俺は大抵、断ることが出来ない。
 その、四条河原町の阪急の裏の、安い居酒屋は、親切な事に朝まで営業していて、翌朝が休みの俺は意地汚く付いて行った。
 俺は目立たないように出口近くの端っこに座った。主催者と思われるヒョロッとした眼鏡の男が「じゃあ、乾杯」と言うまでは、誰にも声を掛けられず、「まあ、人の呼吸を感じながら、酒が飲めるのは楽しいし、後は適当にあしらって・・・・」と思っていたのだ。まあ、独り飲みばかりも飽きるからな。
 ・・・・あのメンバーと一緒にやる。それはとても刺激的なことだろう。ひょっとすると、今まで、俺がやってきたバンドの中で、最も面白いと思える音楽が「聴ける」かもしれない。
 だが、その話は上手く行くのだろうか。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-03-05 00:33 | 第一話 「黒猫は踊る」