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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第5節の3

 そんな猜疑心が生まれる反面、この笑うしかない展開に酔わされかけていた。
 「・・・・そうだな。俺が君を支配しなくて済むならば、やれると思う」、そう答えて、俺は姉さんの肩を叩いて、「そうだよね」と言った。
 姉さんは「え、何」と言って、輝広に訊いた・・・・。
 「ああそう。薫子も同じ様なこと言ってたぜ。『彼が、音楽の場の全ての表面的な構築の責任から解放されて、他人の音を楽しみ、共に想像する神秘を共有できれば』、とかなんとか」
 ふうん、と、俺は一旦その話をあしらった。
 その後、あゆみから“ちゃーるず・みんがすって、どんな人”と訊かれ、二十分位、その話で時間が過ぎた。
 結果的に“その男は、リベラリストで、変人で、兎に角、ベースで他人と会話することと、バッキングの演奏でもソロを演じていると同じ位存在感のある音を出すことに関しては、今でも世界で一番のベーシストだ”という結論に至るまで、長々と自説を披露してしまった。
 「カミさんって、良く知ってるなあ。ミンガスって、良い男だなあ。私、カオルンから、ちゃんと聞いとけば、今日、もっと楽しかったのになあ。次は、もっとちゃんと、ミンガス役やろうっと。ね、そのためにも、何か良いCD、貸して下さいよお」
 と、あゆみは言い、「ねえ、次は、ビール以外の飲まない?」と言って、種類の限られた、そのメニューを食い入った。
 ・・・・俺は、その宴会が始まった一時間弱位の時点で、酔いが四速目くらいに入ったようだった。トイレに行って帰る途中、ふと見ると、店の出口で“冬美”と呼ばれた少年が靴を履いていた。
 “薫子”がその横に腕組みをして立っていた。その後ろ姿は、あの大きな音に比べて華奢に見える。
 「冬美ちゃん、だったっけ。帰るのかい?」
 「見りゃ、分かるでしょ。酔っぱらいは嫌いだし、飲み会のたばこ臭いのが何より嫌だ。ヴァイオリンが腐ってしまう」
 「冬美ちゃんは積極的には飲まないしね」
 「おい、あんた、『癩王のテラス』でやるのか」
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by jazzamurai_sakyo | 2008-03-19 02:40 | 第一話 「黒猫は踊る」