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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第5節の4

 おい、あんた、と言われて俺はさすがにムッとした。そして、黙ったまま、冬美を睨んだ。だが、奴は意に介した向きもなく、リュックを担いで、ヴァイオリン・ケースを手に持った。
 腹の立つ奴だ・・・・。
 「こんな時間まで外にいて、ご両親はお坊ちゃまの事が心配じゃないのかい」
 「うちの親父の代わりに説教してくれるのかな、オッサン。そっちこそ目がトロンとしてるよ。あんまり飲み過ぎて、町で喧嘩してギャング共に殺られんなよ。
 じゃあ、薫子、バイバイ」
 そう言って、冬美はエレベーターホールに出ていった・・・・。なんて口の悪いガキだ。
 「初対面の挨拶が、これかよ」
 「まったく、いけ好かないガキだ、とか、思ってます?」
 薫子は冬美を見送ったまま、そういった。
 「ああ、ホント、最悪だ。・・・演奏は、背筋が凍る位に良かったけれどな」
 「冬美ちゃんの演奏を、良いと思うの?」薫子は振り返って言った。
 質問しているくせに、確信を持っている目だ。
 「クラシックの基礎を、ちゃんとやった音だろ、あれ。かなり上手いな。あんなに情感のない、鋭い演奏はなかなか聴けないぜ。ブルージーな所も全くなかったしなあ。ミンガスが生きてたら、奴とは絶対やらないだろうな」
 「やっぱり、分かったんですね、あの曲。・・・・うちのこと、気に入りました?」
 「ああ。四人とも音が個性的な所が気に入った。性格は、みんなトコトン悪そうだがな」
 「性格は、神ノ内さんも、たぶん悪いのでは。うちのメンバーはみんな毒舌なんです。容赦がないの。まあ、演奏だって、同じ様なもんだけど・・・・。上手く合わせようなんて気持ち、みんな全然、そんな気ないんだから。
 で、どうでしょう。一緒にやる気はありますか?」
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by jazzamurai_sakyo | 2008-03-26 01:25 | 第一話 「黒猫は踊る」