ブログトップ

ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

jazzamuray.exblog.jp

1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第1話 「黒猫は踊る」 第7節の2

 「それで、連休のライブでは、何を演奏するんだ。オリジナルがあるなら、聴かせてくれないか」
 「ああ、あるにはあるんだが。薫子が次のライブではやる気がないみたいだ」
 「じゃあ、今日は何をやるんだ」
 「まあ、そんなに決めなくても良いと思う。最初はゆっくり行ったら良いんじゃないの?
 ・・・・なあ、このリフ知ってる?」と言って、輝広はヘビーなディストーションで、有名なリフを弾き始めた。
 「ああ」「そう、じゃ1、2、3、4」と言って、俺達は、何の打ち合わせも無く、それをやり始めた。
 ・・・・久し振りに聴いた。キング・クリムゾンの“イージー・マネー”を。俺は元々、ジャズというよりも、プログレが好きで、特にキング・クリムゾンは高校生時代に良く聴いた。ビル・ブルフォードのドラム・フレーズは良くコピーした。
 輝広のグレッチは、こういうヘビーなリフを弾くのには適していないと思うが、それでも、エフェクターのチョイスが合っているのか、まるでレスポールの様な音がした。
 それに、歌っている声が低く太く、デカくて、まるで奴が吹いているテナーと同じだった。
 ・・・・1コーラス目が始まる時に、あゆみがスタジオに入ってきた。慣れた手順でセッティングを済ませ、何も言わずに合わせ始める。
 ・・・・ギターソロに入る前に、薫子が入ってきた。少し驚いた様な顔をしたのもつかの間、ちょっと笑って、アルトを肩から下ろし、スタジオ備え付けのキーボードに電源を入れた。
 輝広のギター・ソロは、誰に似ているとも言い難い音だった。やってる曲が曲だから、ロバート・フリップの様な組み立てにならざるを得ないのだろうが、それでも、フレーズの編み込み方が誰々に似ている等とは、俺は言えなかった。
 そんな俺の思考を全く斟酌しない場所から紡ぎ出されるフレーズの斬新さを、本当に純真に楽しみつつ、俺は叩いた。
 久し振りに味わう楽しさだった。時として寄り添い、裏切り、反発し、宥め合う・・・・。こんなに楽しんだのは、久し振りだ。
 音楽でしか味わうことの出来ないエロスだ。これは・・・・。
 “そして、空中に消えてしまった音楽は、二度と取り戻すことは出来ない”
 突然、エリック・ドルフィーの最期の言葉が、俺の頭の中に閃いた。
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2008-04-23 00:07 | 第一話 「黒猫は踊る」