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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第8節の2

 「大体、誰なんだ、宮坂って」
 あゆみと輝広は顔を見合わせて、「誰って?」
 「必ずチケットを買ってくれて、何枚かは売ってくれる人」と、あゆみは言った。
 「勝手に、自分のホームページで『癩王』のライブレビューを書いている人」と輝広は言った。
 「どんな、ホームページなの?」
 「まあ、見たら分かるよ。多分、音楽の趣味は神ノ内さんに似てると思うんだけど。・・・・ちょっとね」
 「ふーん。そんな顔つきで趣味が似てると言われても困るんだけど」
 「俺はああいう奴は嫌なんだ」
 「私にナツイテるのよね、彼。元々は『The End of North』の常連なの。初物好きなのよ。人気が出そうなインディーズ・バンドを誰よりも早く評価するのが趣味なの」
 「・・・・それで、インディーズ・バンド、『癩王のテラス』に対する、そいつの評価はどうなの?」
 「その名の通り、“キング・クリムゾン”の精神を“正当に”受け継ぐバンドなんだって」
 「少々、顔が赤くなる評価だな」
 「それから、カオルンは彼にとって、まかり間違って地上に降り立った天使だそうよ」
 「天使って・・・・」悪魔の間違いだろ。
 「それで、その宮坂って奴がどうしたの?」
 「今から、この店にチケットを取りに来るんだけど」
 あっ、そう、と言った瞬間に入り口のカウベルが鳴った。
 「ああ、あゆみチャン、コンバンハー」と言った目が俺を見つけて曇っていた。
 思い出した。『North』で見た、口元と目元のだらしない男だ。
 「オハヨウっす」と俺は言い、目を背けた。奴は俺達の座るテーブルの残りの一角に座り、焼酎のお湯割りを頼んだ。
 「仕事のけりを付けるのに、踏ん切りが付かなくてさあ」と奴は言った。
 「お疲れサン」と、あゆみは言い、「それでね、これ、五枚。何時もアリガト」と、上手く笑いながら言った。
 宮坂は「ウン」とだけ言い、精算した。
 「薫子ちゃんは?」
 「色々あるんだって。高校生だしね」と言った、あゆみの目は俺を見ていた。んなもん、フォローできるわけないだろ?
 気まずく、黙って飲む時間が五分後、
 「神ノ内さん、でしたっけ。『癩王のテラス』に入ることは決まったんですか?」
 「五月三日の『North』には出るよ」
 「そうですか。楽しみにしています。・・・・僕は個人的には、シーケンサーのクールな感じも好きだったんですけどね」
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by jazzamurai_sakyo | 2008-05-14 00:57 | 第一話 「黒猫は踊る」