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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第8節の3

 「ああ、あのプログラミングは俺も良いと思った。あれは、誰が入れたの?」俺は宮坂の嫌みを受け流した。
 「カオルン」
 「薫子ちゃんの造るグルーブは、何時も、トランスっぽい感じだったんですよ。それをあゆみチャンが横に揺らして、他のメンバーがインプロヴィゼーションを展開して、時々薫子ちゃんが歌を入れて・・・・。僕が現段階で最も理想とする音です。
 でも、この前のは装飾過多で少し下品だったな。それに黒人ジャズのアイデアの完コピなんて、なんかね」
 そう、薫子のことを話す宮坂の口元と目元が、少しだらしなく見えた。そう想った瞬間に思い出した。あの時、『North』のフロアーで見た、奴の皮肉な笑いを。
 「宮坂さんさあ、多分、次のライブ以降、『癩王』は全く違った感じになるから、今までの話は止そうや?」と輝広はゆっくり言った。
 「あれって、違う方向って、言うのかしら?」と、あゆみは軽く眉間に皺を寄せた・・・・。
 「あゆみさあ、ネタバレしたら薫子怒るぜ」
 「宮坂さんは、ああいう古典的なジャズが嫌いなのかい」
 俺は、宮坂の話し方に少し苛ついていた。
 「結局、ああいう古いハードパップのジャズって、どんなやり方やったって、定型的で、面白みがないでしょ」
 「そうかな?」
 「それと、ドラムが入って迫力が出ると、逆にアイデアが単純になって面白くなくなるバンドが多いんでね。
 神ノ内さんって、前は『南蛮』って、ファンキーな感じのバンドにいたんでしょ。『癩王のテラス』は、クールな狂気を感じるところが好きなんでね。神ノ内さんみたいに上手い人が入ることが、少し不安、なんですよね」
 「・・・・クールな狂気って言われても、あゆみは、困るんですうけど」
 「あゆみちゃんは、和み部門担当だもんね」宮坂はそういって皮肉に笑った。
 ・・・・そういえば、あのエレベータの中でジャズの話をした。
 「それで俺は、五〇年代、六〇年代のフリーじゃないジャズにも、時代に風化されない狂気があるぜ。それも、飛び切り凍り付くようなスリリングな奴が、って言ったんだっけな」
 「・・・・思い出しましたか。それで、僕が何を言って貴方が殴ったか、覚えています?」
 「それは、思い出せない」
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by jazzamurai_sakyo | 2008-05-21 22:33 | 第一話 「黒猫は踊る」