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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第8節の4

 「“それがどんなイデオロギーであろうと、イデオロギーと結びついた音楽なんて信じられない。特に、黒人解放運動と結びついた、あの頃のジャズなんて、形式がワンパターンなのに何が解放なんですか”と言ったんですよ。六〇年代のジャズなんて、ソロ回しをしていただけじゃないですか。
 また、殴りますか?」
 ・・・・あゆみが、困った目をしてこっちを見ていた。
 不思議と怒る気はしなかった。冷静に聞いていれば、こいつの主張の拠って立つ場所は、分かる。
 「あんたの言うことは、ある意味分かるけど・・・・。
 でも、形式があるから不自由なんだという訳でもないし、自由な関係の中だって、約束事を探すことばかりにかまけている奴はいるし・・・・」と、そこまで言って、俺は黙った。
 この話は、あの夢の中で、ドルフィーとミンガスが、去り際に俺に話した内容と、リンクするんじゃないか・・・・。
 俺は、あの後、彼らに話す言葉を、探しただろうか・・・・。
 俺は、“自由”について、改めて考えただろうか・・・・。
 そう考える一方で、“俺はこの間の練習で、何か、違う場所に来たんじゃないか”という想いが滲み出してきた。
 “上手く言えないけど、あんた、こいつ等と一緒に演奏したことはなかったとしても、本当に、共に、演奏の中にいたことはあるかい?”
 俺がそれを訊こうとした瞬間に輝広が言った。
 「まあ、次のライブ見てもらえれば、その辺りの話の、俺らなりの考え方が、見てもらえると思うし、これ以上話していると、ネタバレしそうなんで、もうお開きにしませんか」と、輝広は俺の目を見ながら言った。
 「・・・・瀧上君がそういうなら、良いですけど。神ノ内さん、ライブでは、今のご意見の続きを音で聴かして下さいね」
 そう言って、宮坂は帰っていった。
 「・・・・良いのか、輝広。多分あいつ、イントロ聴いた瞬間に帰るぜ」
 「大丈夫さ、薫子のパートを最後に回しておけば、そこまではいるよ。多分、全体を観れば、今度の意図は分かるさ」
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by jazzamurai_sakyo | 2008-05-28 00:45 | 第一話 「黒猫は踊る」