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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第一話 「黒猫は踊る」 第11節の1

     十一

 テーマを演奏していた時に、ふとフロアーを見ると、鍛冶タケシは殆ど同じ格好で立っていた。乗ってもいないが、出ていってもいないということは、何か奴にとって美味しい部分があるのだろう。
 宮坂は・・・・、この展開に少し疲れた顔をして呆然として立っていた。おいおい、お前のメインディッシュは、これからだぜ。
 薫子のソロ・パートのネタは予め決めてあった。
 “私は、そのままやって欲しい”と彼女は言った。
 “そのままって”冬美が怪訝そうに訊いた。
 “レコード通りの雰囲気っていうか・・・・”
 “六〇年代の黒人解放運動ジャズってヤツだな”と輝広がちゃかした。
 “私、ミンガスみたいなウォーキング、長くは無理よ。フォービートなんか、それ風にしか弾けないんだから・・・・”あゆみは不安げだった。
 “あゆみちゃんは、最初の方だけ、全体の雰囲気を造ってくれたらいい。ワンコーラスだけでも・・・・。後は、神ノ内さん、4ビートを出してくれますよね”
 出してはやるが、“慣れたくないから、私のソロの練習はしたくない”と言われた俺は、実は、ここからが一番不安だった。
 練習で薫子はあまりアルトを吹かず、スタジオ備え付けのキーボードばかり弾いていた。
 グルーブが合うのか、合わないのか、全く分からなかった。
 ・・・・テーマが終わる。俺は、トップシンバルを控えめにスウィングさせる。ベースはウォーキングしている。
 薫子は、意外にもすっと入ってきた。整ったフレーズだ。輝広は上手くカウンターメロディーを入れる。
 まっとうなジャズだ。ただ・・・・、薫子のフレーズには、全く黒っぽい所がない。
 あれ、そう言えば、この曲が入っているレコードは数枚持っているが、ドルフィーがこの曲を吹く時、ドルフィーを黒いと思ったことがあっただろうか。
 薫子に最初に会った時、彼女は「You don’t know what love is」を吹いていた。俺はそれを聴いて、“まるでエリック・ドルフィのようだ”と思ったが、今、同じことを感じている。
 それは何故なんだろう。扱っている素材が似通っているだけで、フレーズの組み立て方とか、スタイルが似ているという訳ではないのに・・・・。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-07-16 16:08 | 第一話 「黒猫は踊る」