ブログトップ

ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

jazzamuray.exblog.jp

1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第二話 「青い光」 第2節の2

 「それで、あゆみ姉さんは、どんな人なのかな?」
 「あたし?あたしは四捨五入で三十歳の、ベースを弾くしか能のない、馬鹿な女です」
 「おいおい。自分をクサすなんて、らしくないぞ」
 「そう?」あゆみは笑ったが、目は少しマジだった・・・・。
 店を出た時には、細かい雨が降っていて、「やっぱり、私の勘は当たらないな」と、あゆみは呟いた。
 それから三日間、あゆみからも薫子からも、連絡はなかった。
 俺は、待ちは苦手だ。苛々して、『南蛮』の頃使っていたスタジオに久し振りに電話し、今日の個人練習を入れた。
 家について、冷蔵庫から缶ビールを取り出した瞬間、薫子から電話があった。
 「どうした? 解散か?」と俺は言った。
 「私、親が医者で、継がなきゃならないから、京大医学部を目指して、そろそろ本気出して受験勉強しないと。
 ・・・・って、ウソ。
 実は曲を作りたいから時間が欲しいと思って」
 「オリジナルがあるんじゃなかったのか?この前のライブで、あゆみがちょっと演った曲とか」
 「前に作った曲は、捨てることにした」
 薫子はさっぱり言った。
 「神ノ内さんに渡そうと思って、前の曲の、良いテイクを探そうと思って、ライブのテープを聴いたりしているうちに、・・・・段々違うなって思えてきて、結局、もう絶対演れないと思った。
 みんなには、今度のミーティングの時に、ちゃんと話す。
 神ノ内さんの家でも良いかな? 来週の土曜日。ご飯食べながらでも」
 「いいよ。その代わり、そのまとめようとしてくれた音源、テープでもMDでも良いから、くれないか」
 「アゲナイ」薫子は、子どもの様に言った。
 「なんで」
 「興味ないから、最後までまとめきれない」
 「まあ、良いけど・・・・」
 「ゴメンナサイ」謝るなよ。びっくりするじゃないか。
 「なあ、少し訊きたいことがあるんけど」
 「何でしょう」
 「俺も曲を持っていって良いのか?」
 「良いですよ。というか、これからは、みんなが持ち寄って曲を作って行きたいと思ってて」
 「歌ものを作ったら、歌詞は書いてくれよ」
 「・・・・自分で書くか、あゆみちゃんに頼んだら? 彼女、書き貯めてるはずよ。じゃあ」
 そう言って、薫子は電話を切った・・・・。
 俺は缶ビールに口を付けた。妙な高揚感だ。
 そう言えば、この部屋に移ってきてから、誰か尋ねて来たことがあっただろうか。親でさえ、まだ来ていない。
[PR]
by jazzamurai_sakyo | 2008-10-15 00:32 | 第二話 「青い光」