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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第二話 「青い光」 第3節の1

     三

 「・・・・ねえ、この棚のレコード、一体何枚あんの?」
 あゆみは、レコード棚の前にへたり込んで、呆然と見ている。
 「二〇〇〇枚位から数えてない。多分、三〇〇〇枚ちょっと」
 「・・・・で、こっちのCD棚は」
 「それは多分、二〇〇〇枚ちょっとじゃないか」
 「全部で五〇〇〇枚以上か。一枚二五〇〇円として、えーと、一二五〇万円!」
 「中古が多いから、一〇〇〇万円は超えてないんじゃないかな。・・・・俺は単なる雑食で、マニアじゃないからな」
 「・・・・床は抜けないのかしら」
 「一度、知り合いの建築屋に補強してもらったから、大丈夫だと思うが・・・・」俺は、コーヒーを点てながら言った。
 「私もCDは、三〇〇枚位持ってんだけど。ここにあるの、持ってないのばっかりで、・・・・何がなんだか、さっぱり分かんない。もう、見んの止めよ。目が回りそう」
 「おい、ミルクは?」
 「えっと、普通のミルク? じゃあ、暖めて半分程。
 ねえ、・・・・何かかけて。この瞬間にお似合いの音を」
 五月一八日、晴れた土曜日の午後三時、夕方からのミーティングの準備をすると言って、あゆみは一人、先に俺の部屋に訪れた。しかし、それにしては何も食材を抱えてはいなかった。
 「じゃあ、俺には絶対に演奏出来ない音を・・・・」俺は、ドイツのECMの音源で、C.Haden, J.Garbarek, E.Gismontiの『MAGICO』を棚から引き抜き、プレーヤーに乗せた。
 春の風によく似合う、E.Gismontiのギターが流れ出す。
 「あ、良い感じ。ベース、巧いなあ・・・・。確かに、ドラム鳴ってないし、カミさんにはできないよね」
 「ああ」調子っ外れなことを言う女だ・・・・。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-10-22 00:03 | 第二話 「青い光」