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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第二話 「青い光」 第4節の1

     四

 「・・・・それで、何を食べるって言うの」冬美が嫌気に訊いた。
 「お好み焼き」と、嬉しそうにあゆみが箸を割った。
 「このホットプレートじゃ、五枚一緒には焼けないぜ」と、輝広が肉を広げながら言う。
 「・・・・小麦粉と、キャベツの焼き物だろ?」冬美が毒づく。
 「広島のお好み焼きは、小麦粉の固まりといえる大阪焼きと全く異なる。そのかわり、キャベツの役割は大きい」と輝広は言った。
 「・・・・冬美ちゃんは、こういう、お好み焼きとか、食べたこと無いの?」あゆみが、ドボドボと赤ワインを自分のグラスに注ぎながら言う。
 「あゆみちゃん。ミーティングするんだから、配分考えてね」
 薫子が、この部屋に来て、初めて口を開いた。薫子は、さっき、あゆみがへたり込んでいた場所にあぐらをかいて座り、レコード棚とCD棚を見ていた。
 「想像してた通り、・・・・マニアね」と薫子は低く言った。
 あゆみがケラケラ笑った。「やっぱり。マニアじゃん」
 「・・・・何か、聴きたいのあるか?」
 「そうね、あり過ぎるから、神ノ内さん、何か選んで下さい」
 「じゃあ、最近好きになってきたドラマーを・・・・」俺は、Miles Davisの『Live in Tokyo』を棚から引き抜いたが、即座に薫子は、「マイルスはファシストよ。私は嫌い」と言った。
 あゆみと、今度は輝広までもが、冷笑した。
 「マイルスは聴かなくて良いから、ドラムのアンソニー・ウイリアムスを聴いてくれよ。多分、この録音の時は、薫子と同じ年齢だけど、飛び切り破天荒な演奏が・・・・」
 「多分、トニーの方が一つ下。とにかく、他のにして」
 「じゃあ、ZEPPの『PRESENCE』を」
 「カミさんもドラム馬鹿だな」と輝広が言った。
 ・・・・それから俺達は、輝広が焼いたお好み焼きを食べた。
 なかなか美味しかった。俺があまりに褒めるから、輝広は自慢げだった。「こんな下品なもの食べたこと無い」と言っていた冬美も、二枚食べた。さすがにマヨネーズは付けなかったが。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-11-05 23:18 | 第二話 「青い光」