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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

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1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第二話 「青い光」 第4節の5

 「私が知っていることは、私が聴いた『南蛮』のCDは、ショボかったってことだな。
 まあ、芸歴も長いと色々あるよ。それより・・・・、ああ怖。私、覚えるのって苦手なのよね。これから、全部、やり直しなんて・・・・。大体、スタジオで考えるのも苦手だし」
 あゆみはゴクゴクと赤ワインを飲み干した。
 「でもまあ、何とかなるでしょ。とりあえず、から始めたら?」
 「そうね。それでいい」薫子は俺を見ながら言った。
 その目は、少し嬉しそうだった。
 「じゃあ、とりあえず、私、曲作ってきたから、みんなに渡しておくね」
 ご愛用と思えるブルーの、ボロボロの鞄から、薫子はカセットテープを四本取り出して、みんなに渡した。
 「今、聴くか?」と俺は言った。
 「今は、いい。・・・・恥ずかしい訳じゃないけど、今、この曲についてミーティングしたい訳じゃないから、アプローチは、みんな独りになった時に考えて」と薫子は言った。
 それから俺達は、食べることに専念し・・・・、最後はあゆみが焼きそばを焼いた。キャベツを蒸すのに赤ワインをかけた時にはみんなが叫んだが、・・・・美味かった。小食と思える薫子と冬美も「意外に美味しい」と褒め、俺と輝広は結構食った。
 それから、あゆみは、定期的なミーティングの必要性について言及したが・・・・、惰性になると嫌だから決めるのは止めようと輝広が言い、スタジオで解決できない問題が生じたら、ココに集まって話せば良いと冬美が言った。
 「え? おぼっちゃま、この部屋で宜しいのですか?」と、あゆみが言った。
 「オッサン、タバコ吸わないんでしょ。それに、意外と整頓されてるし、まあ、ココで良いよ」
 “まあ”ですか。“まあ”ね。どうやら、冬美の中で俺の呼称は“オッサン”に落ち着いたらしいな・・・・。
 薫子と冬美は十一時位に、例の如く先に帰った。「もう眠い」と冬美が言い、タクシーを呼んだ。
 タクシーを見送りながら、あゆみは「ねえ、カオルンから聴いたんだけど、良いモノ持ってるんだって?」と言った。
 「良いモノ、とは?」あいつ、やっぱり気付いてたか。
 「・・・・シラ切らないで、ハッパ、あるんなら、ヤラセテよ。きっとあると思って、私、北山通りのゴディバ寄って、チョコレート買ってきたんだから」
 「そうなの。何だ、早く言ってよ」輝広の目も輝いている。
 「・・・・良いよ。じゃあ、今日は最後のパーティだな」
 「なんで」と、あゆみは意外そうな顔をして言った。
 「もう、ハッパは止めることにしたからさ。それが無くても、俺は異世界に行ける・・・・。おまえらと演奏するなら」
 輝広はふふん、という顔をし、あゆみはワイングラスを回しながら言った。「それ、何時か、カオルンと冬美ちゃんにも言った方が良いよ・・・・」と。
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by jazzamurai_sakyo | 2008-12-03 00:48 | 第二話 「青い光」