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ジャズ侍のブログ小説 ~ 青い光      

jazzamuray.exblog.jp

1990年代半ばの京都を舞台にしたバンド小説を書いてます。文中の場所、人は全く架空のものであり、実在の場所、人との関係は一切ありません。掲載は当面、毎月第一水曜日の予定。

第二話 「青い光」 第10節の3

 気まずい雰囲気を察知したのか、あゆみは「カオル~ン、冬美ちゃんのヴァイオリンのセッティングだけミキサーさんと打ち合わせよう?」と薫子に声をかけ、薫子は小さく頷いた。輝広は既に片付けを終えて消えていた。
 それから俺達は、一度ホテルに戻り軽く打ち合わせをした。しかし、六時まで待ったが、冬美は姿を現さない。
 薫子は、そのことについて何も話さない。輝広とあゆみは、缶ビールを買ってきて飲んでいる。
 「今日は全部見ようと思うから、行って良いか?」俺は、何か気まずくなって、そう言った。あゆみが手をひらひらと振り、「スケジュールが変わるみたいだったら連絡して」と言った。
 イベントは六時丁度に始まった。出演は九バンド。
 最初のバンドは、割と若い奴らに見えたが、古いロックを演った。昔から不思議に思っていたが、何故、京都にはこういうロックンロール・バンドが多いのだろうか。ブルースが根強いことと関係があるのだろうか。
 この箱には、こういうバンドもよく似合うが、俺は正直、好きじゃなかった。家でデッカ時代のストーンズを聴いていた方がましだと思ってしまうのだ。
 次のバンドは以前見たことがある。確か、京都芸大のバンドだった。昔見た時の印象そのまま、面白い音をしている。ただ、練習時間が無かったのか、昔聴いた曲ばかりだった。
 三番目は女性三人の可愛い系パンク。これも以前見たことあるが、全く変わってない。新曲だろうが昔からの曲だろうが、アプローチが一緒で大差ない。こういう音は、流行のサイクルがあって、必ずフォロアーが出てくる。
 最近、何の気無しに立ち読みしたファッション雑誌でもカラーで取り上げられていたが、俺は正直、昔からこういう音が好きじゃなかった。パンクは、フリージャズと一緒で、自己破壊というか、常に変化すべきだと思っているからだ。
 四番目は格好良かった。プログラムしたシーケンサーを入れ替えの時から鳴らして、徐々に楽器が入ってくるのだが、ねちっこいフレーズを展開するベース以外は延々とシンセの電子ノイズと、屑鉄を叩く音をアンプリファイドしたノイズ、四台のカセットデッキでひっきりなしに取り替えられるテープに収められた音の暴力的な断片、等を巻き散らかした。
 終わり方も、入ってきた順番に一人一人抜けていき、最後にシーケンサーだけがなっているのを、スタッフが止めた・・・・。
by jazzamurai_sakyo | 2009-04-01 01:24 | 第二話 「青い光」

by jazzamurai_sakyo